音楽家が知っておきたい「サラリーマン」と「フリーランス」の違い/Vol.1
音楽家さん(ミュージシャン)の大多数はフリーランス(個人事業主)という働き方になると思いますが、サラリーマン(給与所得者)との違い、メリット・デメリットはきちんと理解出来ているでしょうか?
「音TOWN」(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。
このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!
お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!
この記事を読むと役に立つ人は!?
・音楽家としてのキャリアに悩んでいる方
・フリーランスとサラリーマンの違いを理解したい方
・独立するかどうか悩んでいる方
読んだ後に解消される不安は!?
・フリーランスになる事への不安
・それぞれの働き方のメリットとデメリットの理解不足
・自分にどちらが向いているかの迷い
サラリーマン(給与所得者)のメリット・デメリット
まずはざっくりと、それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
- 安定した収入:毎月決まった給与が支払われるため、経済的な安定が得られます。
- 福利厚生:健康保険、厚生年金、失業保険などの社会保険が完備されており、安心して働く事が出来ます。
- 定時の労働時間:基本的に働く時間が決まっているため、プライベートな時間を確保しやすいです(基本的に「雇用契約」)。
- キャリアの安定性:企業に属する事で長期的な雇用が期待出来、キャリアパス(昇進・昇給の道筋)が明確です。
- 労働環境の整備:多くの企業では、働く環境が整備されており、業務(本業)に集中しやすいです。
デメリット
- 柔軟性の欠如:決まった時間と場所で働く必要があり、自由度が低いです。
- クリエイティブな自由の制約:会社の方針や上司の指示に従う必要があるため、自分のアイデアを自由に実現する事が難しい場合があります。
- キャリアの限界:昇進や給与アップが会社の評価に依存するため、自分の努力が直接的に反映されない場合があります。
- 転職のリスク:一度会社に入ると転職が難しくなる場合があり、キャリアチェンジのハードルが高くなる可能性があります。
- 労働環境の制約:特定の企業文化や環境に馴染む必要があり、ストレスを感じる事があるかもしれません。
フリーランス(個人事業主)のメリットとデメリット
メリット
- 自由度の高さ:自分の好きな時間に働く事が出来、プロジェクトやクライアントを自由に選ぶ事が出来ます(基本的に「業務委託契約」)。
- クリエイティブ:自分のアイデアやビジョンを自由に実現する事が出来ます。
- 収入の可能性:成功すれば、サラリーマン以上の収入を得る事が可能です。
- 多様な経験:さまざまなイベントやクライアントと関わる事で、多様な経験が得られ、スキルの幅が広がります。
- ネットワーキングのチャンス:多くの人と関わる事で、業界内でのネットワークが広がり、新たなチャンスが生まれる可能性があります。
デメリット
- 収入の不安定:イベントの有無によって収入が変動し、経済的な安定を保つのが難しい場合があります。
- 自己管理の必要性:スケジュール管理や健康管理が自分の責任となり、自己管理能力が求められます。
- 社会保険の未整備:健康保険や年金などを自分で管理・負担する必要があります。
- 孤独感:職種によっては一人で仕事をする事が多く、孤独感を感じる場合があります。
- 事務作業の負担:経理や税務などの事務作業を自分で行う必要があり、本業以外の時間の確保とスキルが必要になります。
もしかしたら上記の解説について少し違和感を感じた方もいらっしゃるかもしれません。
それは、、
音楽家・ミュージシャンと言っても、いわゆる「職業音楽家」と「芸術家(アーティスト)」ではかなり状況が違いますよね。
たとえば、フリーランスのメリットで取り上げた「自由度」に関しては、職業音楽家の場合はそんなに高いとは言えないと思います。
音楽事務所からの依頼で演奏を行う場合や、タレントさんのツアーサポートやミュージカルの仕事を請ける場合、そもそも先方で日程が決まっているので、働く日を自分で自由に決められるわけではありませんよね(ダブルキャストになっていて、公演日の中から相方と相談して稼働日を決められる場合もありますが)。
ましてや自分のやりたい曲を演奏出来るわけでもありません(基本的にはクライアントの意向に合わせるのが常識と言えます)。
以前、若い音楽家サポートのNPO法人のディレクターをやっていたのですが、この「職業音楽家」と「芸術家(アーティスト)」の違いを理解していない方たちが意外に多くて驚きました。
確かに音大では特にこの辺りを教わらず、演奏の技術や表現力といった芸術性を学んでいるので無理もないかもしれませんが、もしも大学を卒業してフリーランスになったけど、なんか仕事がうまくいかないという方は、この記事で説明した内容をもう一度よく理解する必要があると思いますね(コロナ前までは何となくうまくいっていたけど、今後に不安があるという方も学び直しの価値があると思います)。
自分がどちらに向いているのか
自分がどちらの働き方に向いているかを判断するためには、自身のライフスタイルや価値観、仕事に対する考え方を見つめ直す事が重要です。
安定した収入と決まった労働時間が重要な方にはサラリーマンのほうが向いているかもしれません。
一方で、自由な働き方やクリエイティブな活動を重視する方にはフリーランスのほうが適しているでしょう。
とは言え、前述の通り、フリーランスで高い自由や収入を手に入れているのはほんのひと握りの優秀な音楽家のみです(「優秀」とは必ずしも演奏技術だけを言及しているわけではありません)。
ある意味サラリーマン的な低い自由度の中で働いているにもかかわらず、収入が安定しない、福利厚生なども何もないという方が非常に多いのが現実ではないでしょうか。
多くの音楽家がフリーランスになる理由
僕の個人的な意見も含みますが、多くの音楽家がフリーランスになるのは「ポジティブな職業的選択」ではなくて、(特に音大卒の場合は)「音楽家・演奏家として就職する先(雇用契約する会社)がなくて、ただ何となくフリーランス」になっているからだと思います。
これだと、めちゃくちゃリスキーな社会生活のスタートになります。
もしくは、人によって20代後半なのか、30代なのか、40代なのかはわかりませんが、キャリアの途中で大きな壁にぶつかります。
実際、壁にぶつかって廃業している方は結構多いかもしれません。
演奏でサラリーマン的な雇用契約を結べるのは、給与が支払われるレベルのオーケストラに受かるとか、管打楽器の場合は自衛隊や消防、警察音楽隊のような公務員になるしかないと思います。
僕の知る限り、ジャズやポップスでは一つもありませんね(音大で特にジャズ科に入学する方は、そもそもの選択がかなりリスキーである事を理解しておいたほうが良いと思います)。
※ジャズ科がNGという意味ではありません!
あとは、「非常勤講師」ではなく、音大などの「教授」になるかですけど、これもまたほんのひと握りですよね。
ネガティブな部分を多く取り上げましたが、きちんと違いを理解し、自分の価値を上げていける方にとってフリーランスはとても魅力的な働き方で、僕の周りでも多くの方が成功しています。
ちなみに過去に僕が経験してきた仕事の中では、ディズニーのパフォーマーやヤマハ音楽教室の講師は業務委託(契約上はフリーランス・個人事業主)ではありますが、ややサラリーマン的な働き方で、その分、完全なフリーランスよりは収入の安定がありました。
働き方改革・ホワイト企業を活用しよう!
最近ではコンプライアンスの問題や、「売り手市場・人手不足」で、雇われる側に有利な条件(副業OK・残業がない・土日はきっちり休み etc.)の企業も増えてきているので、平日はホワイトな企業で給与をもらって働き、帰宅してから防音の家で練習、土日に音楽活動を行うといった事も十分可能になっていると思います。
ご高齢の音大の教授陣や一昔前の諸先輩たちの時代よりはるかに柔軟になり、多様性が生まれている時代ですので、そういった方たちのアドバイスだけでなく、「自分軸」でキャリアを形成していくのも良いのではないでしょうか。
音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹/音TOWNプロデューサー
【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/メンタル心理インストラクター®/体幹コーディネーター®』