フリーランス音楽家の節税に有効な「経費」の話【後編】/Vol.8
※この記事は【前編】から続いています。
サラリーマンのようにボーナスがないフリーランスにとって、「確定申告」後に戻ってくる「還付金」は、人によっては一年に一度のボーナスのようなものかもしれません♪
「還付金が増える」=「所得をおさえられている」ので、所得にかかる「所得税」や「住民税」もおさえられる事になりますね。
今回は節税のために重要な「経費」について解説します!
『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。
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このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!
お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!
この記事を読むと役に立つ人は!?
・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・初めて確定申告を行う方
・毎年確定申告を行っているが、実は仕組みをよく分かっていない方
読んだらどんな良い事が!?
・確定申告の基本が理解出来る
・経費がどういうものなのか分かる
・還付金を増やし、所得税・住民税を下げ、節税をする事が出来る
経費として認められる可能性が高いもの
【前編】では「音楽活動に関する経費」について解説しましたので、【後編】では「それ以外」について解説していきます!
仕事環境・通信関連
自宅の家賃 = 地代家賃(按分)
プロの音楽家さんの多くは、自宅に音を出せる環境があり、人によってはレッスンを行っている方、作編曲などの制作のお仕事を行っている方もいらっしゃると思います。
仮に自宅では練習しかしない場合でも「練習は収入を得るのに必要不可欠」なので、経費(地代家賃)として認められる事になりますね。
ただし、自宅の場合は(住居と別に事務所を借りない場合は)サラリーマンと同じように、日常生活(衣食住)にも使用しているので、全額が経費として認められるわけではありません。
そこで、聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、「按分(あんぶん)」という考え方があって、
・練習場所、レッスン場所、事務所として利用しているスペースは自宅全体の面積の◯%
・そのスペースを利用しているのは1日◯時間程度
といった根拠から、例えばそれが2割程度であれば、家賃の20%が経費扱いに出来る事になります。
スマホ・インターネット代 = 通信費(按分)
このご時世に、スマホやインターネットを使用していない方はいらっしゃらないですよね。
奏者同士のやり取り(電話やLINE)や、仕事のための情報収入に不可欠なこれらも「経費(通信費)」として認められますが、例えば、仕事用とプライベートのスマホが共通の場合、家賃と同じく全額が経費として認められるわけではなく「按分」が必要になります。
電気・ガス・水道代 = 水道光熱費(按分)
自宅で仕事をする場合、当然電気、ガス、水道も使用するので、やはり「経費(水道光熱費)」として認められますが、全額ではなく「按分」になります。
事業用のパソコン・タブレットの購入費 = 消耗品費(10万円未満) or 減価償却費(10万円以上)
「楽譜作成ソフト」を使用して譜面を書くとか、チラシを作るとか、インターネットで情報収集するとか、パソコンはプロの音楽家さんにとって楽器と同じようなものかもしれません。
最近ではタブレットで楽譜を表示させて演奏する方も増えましたよね。
これらは【前編】で解説した「楽器」と同じ経費区分になります。
ちなみに、楽譜を印刷するためのプリンターや、充電ケーブル、データを保存するためのSDカードなども、「収入を得るために使用していれば経費」に出来ます。
移動・宿泊関連
電車・バス・タクシー代 = 旅費交通費
【前編】でも少し例に出したように、フリーランスは仕事場まで「自費」で行く事になるので、その場合は「経費(旅費交通費)」になりますね。
ただし、クライアントが別途交通費を支給している場合は「二重請求」のような形になるのでNGですし、【前編】でも触れたように「自宅から徒歩3分の会場にタクシーを使う」と、経費として認められない可能性が高いと思います。
(自家用車を持っていない方が、「大量の機材や楽器を会場に搬入しないといけない」といった合理性があれば経費になると思います)
レンタカー代・高速道路、ガソリン代 = 旅費交通費 or 車両費
自家用車は持っていないけど、楽器を複数持ち運ぶ時や、公共交通機関では行きにくい会場でお仕事の場合だけ、レンタカーやカーシェアを利用するケースもありますよね。
これらも「経費(旅費交通費 or 車両費)になります。
ちなみに「自家用車」の場合は家賃、スマホ代などと同じく、プライベート使用が含まれるので、「按分」の必要があるので気をつけてください。
ホテル代 = 旅費交通費
「アーティストさんの全国ツアー」や、「ミュージカルの地方公演で2週間地方に滞在」といった場合、通常は事務所が宿泊先を用意していると思うので、あまり経費にする事はないと思いますが、例えば「地方の楽器店で丸1日レッスンと選定をお願いします」というようなお仕事で、「交通費・宿泊代はギャラに込み」で、「自分で航空券やホテルを手配する場合」などに「経費(旅費交通費)」にするケースが考えられます。
広告・宣伝・販売促進関連
ホームページ(Webサイト)の制作・維持費 = 広告宣伝費
ホームページの制作を「WIX」、「ジンドゥー」、「ペライチ」のような「無料サービス」を利用している方も多いと思いますが、WordPressなどでしっかり作り込む場合に有料で業者にお願いする場合もあるかと思います(『音TOWN』はこの形です)。
また、無料サービスであっても、「サーバー」を借りるのは有料だったり、「ontown.net」のような「独自ドメイン」と呼ばれるものには使用料が発生しますよね。
プロの音楽家さんにとって、ホームページは重要なPRの手段であり、「収入を得るために必要不可欠」と言えるので、当然、制作費や維持費は「経費(広告宣伝費)」という扱いになります。
名刺・チラシの製作費 = 広告宣伝費
奏者同士が現場で知り合った場合、最近はLINEの交換などで済ませる事が増えましたが、相手が会社関係者や事務所関係者だった場合、まだまだアナログな紙の名刺の出番もありますよね。
コンサートのチラシも、手配りがありますが、これらもデザイナーに外注して制作してもらったり、印刷費がかかった場合は「経費(広告宣伝費)」になります(もちろん、印刷をしないでSNS用だけにデータ作成を依頼しても経費です)。
SNS広告・Web広告 = 広告宣伝費
最近ではテレビCMなどと違って、InstagramやFacebookに個人でも簡単・安価に広告が出せるようになりましたよね。
これらも文字通り「経費(広告宣伝費)」です。
PR動画制作費 = 広告宣伝費
これも、最近では自分でも出来ちゃいますが、アーティストさんのMV(ミュージックビデオ)的なものを依頼して制作してもらったりした場合、「経費(広告宣伝費)」に出来ます。
CD・グッズ制作費 = 販売促進費
クラシックやジャズでは特に、まだまだCDの需要もありますし、コンサート会場で販売するためにクリアファイルを作ったりする音楽家さんもいらっしゃると思いますが、これらももちろん「経費(販売促進費)。
交際費・業務委託関連
仕事の打ち合わせ・会食 = 会議費(1人あたり5,000円以下) or 接待交際費
サラリーマンと違い、こういった費用も「経費」として認められる場合があります。
例えば、ユニットで活動しているメンバーがカフェに集まって「選曲の相談」をするとか、個人事業主だけど、人を雇って音楽教室を運営している代表が「発表会の打ち上げ」をセッティングしたような場合、「会議費」や「接待交際費」として「経費」に出来ると思います。
ただし、「普段の飲食」や「飲み会」との線引きが難しく、グレーになりやすい部分ですので、「あくまで事業のため・収入を得るため」というルールを守って申告する事が大切になります。
楽曲アレンジ・レコーディングエンジニア・演奏スタッフ・コンサートスタッフ = 外注費
クラシックの奏者の場合は特に、自分では編曲をせず、アレンジャーさんに依頼する事も多いと思います。
CD制作をする際には、レコーディングエンジニア(録音・ミキシング・マスタリング)さんが必要になりますし、ピアニストが「譜めくり」の方をお願いしたり、リサイタルのような自主公演では共演者を集めたり、受付やステマネ、照明や音響さんが必要になったりしますよね。
これらも「経費(外注費)」という事になります。
その他
衣装代(ステージ衣装・撮影用衣装)= 衣装費 or 消耗品費
演奏用の「タキシード」や「ドレス」はプロの音楽家さんには必要不可欠なアイテムで、クラシックのコンサートに私服で出演するわけにはいかないので、当然「経費(衣装費 or 消耗品費)」です。
クラシックやジャズの奏者ではあまりいらっしゃらないかもしれませんが、コスプレで動画配信をして収益を上げている場合も「経費」と言えますよね(趣味はNGですよ!)。
また、「クリスマスコンサートでサンタの格好」とか「ハロウィンコンサートで何かの仮装」なども、趣味ではなく、必要不可欠であれば「経費」に出来ると思います。
ヘアメイク・スタイリスト代 = 外注費
この項目も、サラリーマンでも髪は切る、整えるので、プライベートはNGですが、MVの撮影やテレビ出演でメイクをするとか、普段は黒髪だけど、ロックバンドの演出上、どうしても金髪にしないといけないなど、必要性があれば「経費(外注費)」として認められると思います。
楽器保険など = 保険料
ヴァイオリンやヴィンテージ楽器など、高額な楽器を所持している方は保険に入っていると思いますが、仕事で使用している楽器であれば保険料も「経費」です。
クラウド型の会計ソフト = 通信費
会計ソフトだけでなく、データを保存しておくためのクラウドサービスなども、事業のためであれば「経費(通信費)」です。
銀行振込手数料 = 支払い手数料
細かいですが、先述の業務委託の外注さんに報酬・謝礼を支払う際、銀行振込を利用するケースも多いと思いますが、その際に発生する手数料も「経費(支払い手数料)」扱いとなります。
まとめ
いかがでしたか。
人によっては「こんなものも経費に出来るの!?」と驚かれた方もいらっしゃるのでは?
「ちりも積もれば山となる」じゃないですけど、一つひとつは小さな額であっても、合計すると結構な金額になり、合法的に所得を下げる事が出来るのがお分かりいただけたでしょうか。
結果、還付金が増えたり、所得税や住民税がおさえられるわけですね!
繰り返しますが、経費として認められるか・認められないかは、「事業として収入を得るため」か「プライベート・趣味か」の違いです。
通常、確定申告の際に細かく合理性を説明して申告する事はありませんが、申告後にもしも税務署から連絡が来て「本当に自宅の50%も事業に必要ですか?」とか「この接待交際費は本当に仕事の飲み会ですか?」と聞かれる可能性はゼロではないので、きちんと説明出来る事が大切になりますね。
証明においてはやはり「レシート・領収書」は大切なので、特に現金払いの場合はしっかり保管する習慣を付けておきましょう。
(クレジットカード払いの場合は明細が残るので、レシートがなくても証明になる可能性が高いと思います)
サラリーマンと違って、いろいろ経費に出来るからと言って、プライベートな部分まで経費にしていると、それは「節税」ではなく「脱税」になるので、十分に気をつけてください!
音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹/音TOWNプロデューサー
【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』