フリーランス音楽家が確定申告に必要な「減価償却」の話/Vol.9
『音TOWN.Biz』では、この1月、2月、重点的に確定申告に使える「お金の学び直し」の情報をお届けしています。
今回は『フリーランス音楽家の節税に有効な「経費」の話【前編】/Vol.7』で予告した「減価償却」について。
すでに毎年確定申告を行っている音楽家さんには特に目新しいワードではありませんが、初めての方には聞き慣れない言葉で、ちょっとややこしいと感じるかもしれませんね。
今回はこの「減価償却」を分かりやすく解説していきます!
後半には「節税のポイント」「大きい買い物のタイミング」「青色申告のススメ」についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください♪
『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。
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このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!
お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!
この記事を読むと役に立つ人は!?
・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・初めて確定申告を行う方
・毎年確定申告を行っているが、実は仕組みをよく分かっていない方
読んだらどんな良い事が!?
・確定申告の基本が理解出来る
・減価償却がどういうものなのか分かる
・楽器や備品購入の適切なタイミングの参考になる
まずは「必要経費」の復習を!
まずは上記の記事で、「一括で経費に出来る項目」にどんなものがあるかを確認、復習しておいてください!
【前編】の最初のほうで、
楽器や機材の購入費 = 消耗品費(10万円未満) or 減価償却費(10万円以上)
当然ですけど、音楽家さんは楽器がないと仕事にならないですよね!
声楽・ボーカルの方は楽器はいらないですけど、例えば「自宅での練習用(もしくはライブ用)に5万円のキーボード」を買ったら「経費(消耗品費)」です。
もしくは1万円のマイクを買っても「経費(消耗品費)」です。
プロが使用している楽器の多くは10万円以上すると思うのですが、1年しか使わないという事はないので、消耗品ではなく、減価償却資産だと考えられます。
という説明をしましたが、今回の記事はこの補足となります♪
減価償却とは!?
先述の通り、「減価償却」とは、楽器や機材を購入した際、10万円以上の場合に適用となるのですが、簡単に言うと、
「高価な楽器や機材は長く使うから、一括で経費にせず、何年かに分けて経費にしましょう」
という考え方ですね。
購入した年に全額経費に出来ず、複数年にわたって費用計上する必要がある資産の事を「減価償却資産」と言います。
実際のところ、5万円のキーボードであっても1年しか使わない、もたないという事はないと思うのですが、「あくまで税制上のルールとして、10万円未満は消耗品費として一括経費、10万円以上は減価償却費として複数年かけて経費にする」と考えてください。
音楽家さんが対象になりやすい「減価償却資産」は、
楽器・(スピーカーなどの)音響機材・(マイク、オーディオインターフェースなどの)レコーディング機材・(楽譜作成ソフトなどの)パソコンのソフトウェア・スタジオの防音工事費用
などでしょうか。
繰り返しますが、「10万円以上」の場合です!(10万円未満は消耗品費などになります)
上記には入れていませんが、【後編】で取り上げた「ドレス・タキシード」などの衣装も、もしも10万円以上だったら「減価償却費」になりますね。
耐用年数って!?
減価償却は「一括で(その年の)経費に出来ない」「何年かに分けて経費にしましょう」との事ですが、「じゃあ、何年に分けるの?」という疑問がわいてくると思います。
そこで必要になるのが「耐用年数」という考え方で、「新品」の場合、
・楽器・音響機器 → 5年
・パソコン → 4年
・パソコンのソフトウェア → 3年
・防音工事費用 → 15年
・衣装 → 2年
のように、国が定めた年数で減価償却するんですね。
※パソコンも「サーバー用は5年」とか、パソコンのソフトウェアも「会社が利用すると5年」など、細かいルールがあるらしいですが、『音TOWN』はフリーランスの音楽家さん向けの情報サイトなので、ややこしくしないように、詳細は省かせていただきました。
ちなみに、この「耐用年数」も、あくまで税制上のルールであって、楽器メーカーなどが定めているものとは異なりますのでご注意を!
減価償却の計算方法
新品の場合
減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」がありますが、フリーランスは原則「定額法」を使います。
つまり、
『50万円のピアノを買ったら、「50万円 ÷ 5年(耐用年数)= 10万円」で、10万円ずつ、5年間経費として計上出来る』
という事になりますね♪
中古の場合
1 法定耐用年数の全部を経過した資産
その法定耐用年数の20パーセントに相当する年数
2 法定耐用年数の一部を経過した資産
その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20パーセントに相当する年数を加えた年数
なお、これらの計算により算出した年数に1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年とします。
となるそうです。(「国税庁:中古資産の耐用年数」)
ですので、
1 → 5年以上使用されたピアノを中古で買った場合、「5年 x 20% = 1年」ですが、耐用年数は「2年」になる
2 → 2年使用されたピアノを中古で買った場合、「5年(耐用年数)- 2年(経過年数)」+「2年(経過年数)x 20%」= 3.4年(小数点以下は切り捨てで「3年」)
となるわけですね。
減価償却出来ないケースは!?
基本的には上記のルールでOKなんですが、「希少価値の高いもの」は減価償却出来ない場合があるそうです。
以前ニュースになったのは、カレーチェーンで有名なココイチ(CoCo壱番屋)の創業者が資産管理をしている会社でヴァイオリンの「ストラディバリウス」を減価償却し、経費として処理したところ、国税局からNGが出て、20億円の申告漏れを指摘された事がありました。
考え方としては、
減価償却とは「価値の減少に伴って資産を費用化していくもの」なので、「ストラディバリウス」のように、希少価値が高く、時間の経過により価値が下がらないもの、むしろ価値が上がるものなどは減価償却の対象にはなりませんよ。
という事ですね。
ネット上でいくつか、税理士さんによる記事を見てみましたが、
・一概には言えませんが100万円以上である場合はご注意ください。
・一点100万円以上の場合は原則減価償却が出来ません。
といった内容が書かれていましたので、「100万円」が一つの目安と言えそうです。
注意したい事
今回の記事で、
「減価償却」は一括(一年)で経費にせず、何年かに分けて経費にする仕組み」
だという事がお分かりいただけたかと思います。
という事は、例えば、年末近くになって、
「その年の売り上げ、経費を計算してみたら、どうやら100万円くらい所得が黒字になりそう」
「よし、じゃあ100万円の楽器を買って経費にして、所得をゼロにして、所得税、住民税を減らそう!」
というのは出来ないという事ですね。
(その年に経費に出来るのは100万円 ÷ 5年 = 20万円)
大きい買い物のタイミング!?
逆に、「どうしても100万円の楽器を購入する必要がある」とか、「事業用のパソコンやスマホが壊れそうなので買い替えたい」といった場合、年末に買うか、年明けに買うか、ちょっと悩みませんか?
フリーランスというのは、毎年の収入(売り上げ)が一定ではない、安定しない職業です。
もしも「今年はあまり収入がなく、納税も少なそう」で、「来年はミュージカルやツアーの出演が決まっていて、今年よりも収入が高そう」であれば、年明けに大きい買い物をしたほうが節税になる可能性が高いですよね!(減価償却だけでなく、10万円未満の消耗品であっても)
青色申告の特例
以前、上記の記事で、確定申告には「白色申告」と「青色申告」があると少しだけご紹介しましたが、青色申告の場合は、10万円未満ではなく、「30万円未満」まで一括で経費計上出来る場合があります!
売り上げ・収入・所得が高くなってきているけど、まだ「白色申告」の方は「青色申告」を検討してみても良いかもしれませんね。
サブスクなどの会費払いに注意!
ちなみにこれは減価償却の話ではないのですが、僕の経験です。
年末に所得の計算をしてみたところ、結構売り上げがあったので、経費を増やそうと思い、Webサイトの「サーバー使用料」を5年一括で支払いました。
ですが、税理士さんによると、これも5年分を一括で経費にする事は出来ず、その年ごとの経費となるそうです。
サブスクなどの会費などは、いくらまとめて支払ったとしても、実際に使用しているのは「何年何月分」のように、その都度(その時)だからですね。
言われてみれば納得の話でした。
まとめ
というわけで、今回も、「正確に確定申告をする」「節税をする」「楽器やパソコンなどの大きい買い物はいつにすると良いか」など、フリーランスの音楽家さんが知っておかないと損をする内容をお届けしました♪
ぜひ参考にしてみてください!
音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹/音TOWNプロデューサー
【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』