フリーランス音楽家のための「青色申告」入門♪/Vol.13

今年もあっという間にゴールデンウィークが終わり、1年の3分の1以上が経過しました。

気付けばまた1年が終わり、「確定申告」の時期がやってきますよね。

少し気が早い気と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回からの「音TOWN.Biz」は、今から学んでおくと節税になるかもしれない「青色申告」について解説してみたいと思います!

『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。

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このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!

お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!

この記事を読むと役に立つ人は!?

・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・「白色申告」「青色申告」の違い、メリットやデメリットがよく分かっていない方
・節税をして手元に残るお金を増やしたい方

読んだらどんな良い事が!?

・「青色申告」のメリットが分かり、導入のきっかけになる
・所得税や住民税の節税になる可能性がある
・税理士やクラウド会計の活用で「音楽」に集中出来る

なぜミュージシャンは「白色申告」の方が多いのか?


フリーランス音楽家に必要な「確定申告」の基本と「節税」ポイント/Vol.2

「白色申告」「青色申告」の違いと、それぞれのメリット/デメリットについては、簡単に上記のブログでご紹介しました。

フリーランスの音楽家さんが、ご自身(自分一人)で売上や経費(領収書)の管理をし、「白色申告」をしている理由は、

所得(売上/年収)がそこまで高くないので「白色申告」でも全額還付される

税理士さんにお願いしたり、クラウド会計を導入するとお金がかかる(ような気がする?)

それなりに所得はあるけど、「青色申告」は複雑、めんどくさそうなのでやっていない

などではないでしょうか。

もちろんミュージシャンも、楽器、機材、衣装、交通費など、それなりに経費はかかるのですが、同じ「個人事業主」であっても、食材やお酒の仕入れ、店舗の家賃、アルバイトの人件費などがかかる飲食店や居酒屋と比べると、実はあまり経費がかかっていないはずです。


フリーランス音楽家の節税に有効な「経費」の話【前編】/Vol.7


フリーランス音楽家の節税に有効な「経費」の話【後編】/Vol.8

「白色申告」であっても、上記のブログで紹介している「必要経費」を正当に活用したうえで還付になっていれば良いのですが、不当に経費を水増ししている場合は「脱税」です。

それなり稼げていて、所得税、住民税を結構納めているのに「白色申告」の方は、「脱税」ではなく(合法的な)「節税」が出来るのに、もったいないと思いませんか。

※以前お世話になった先輩ミュージシャンで、月収100万は軽く超えているのに「白色申告」で、後輩の同業者に申告してもらっている方がいらっしゃいました。

この方はかなり多く、払わなくても良い税金を納めていると思いますし、そもそも税理士さんでない方に確定申告を代行してもらうのは、実は違法(税理士法違反)なんですよ。

参考:「確定申告を本人以外が提出することは可能?」(freeeより引用)

「青色申告」のメリットとデメリット

今回の記事では、「青色申告」のメリットとデメリットについて深掘りしていきたいと思います。

最大65万円の特別控除が受けられる

30万円未満の備品を一括で経費に出来る(少額減価償却資産の特例)

赤字を3年間繰り越せる

家族に給料を払い、賃金を経費に出来る(専従者給与)

大まかに上記のような「白色申告」にはないメリットがあり、活用する事で節税効果が高くなるのですが、デメリットとしては、「帳簿付け(複式簿記)」が必要になり、手間が少し増える事でしょうか。

ちなみに、昨今ではクラウドの会計ソフトの性能が上がり、簿記の知識がなくても安価で、自分一人でも出来るようになってきていると思いますね。

最大65万円の特別控除が受けられる!


フリーランス音楽家が確定申告に使える「控除」の話/Vol.10

「控除」については上記のブログで解説しました。

「基礎控除」とは、「誰でも所得から差し引いていい金額」で、「白色申告」の場合は48万円でしたね。

「青色申告」の場合、この基礎控除48万円とは別に「青色申告特別控除」(最大65万円)が適用になり、併用が可能なため、最大で113万円が控除される点もお伝えしました。

実際にはさまざまな「経費」を差し引いて所得を計算するわけですが、もしもこの「基礎控除」だけで考えた場合、

「白色申告」の場合:年収300万円 – 基礎控除48万円 = 『所得252万円』に税金がかかる

「青色申告」の場合:年収300万円 – 基礎控除48万円 – 青色申告特別控除65万円 = 『所得187万円円』に税金がかかる

所得が252万円か187万円かでは、所得税だけでも5万円くらい変わってくるようですね。

住民税や国民健康保険料なども所得に応じて下がるため、トータルではさらに節税になる可能性もありますよ!

30万円未満の備品を一括で経費に出来る!(少額減価償却資産の特例)


フリーランス音楽家が確定申告に必要な「減価償却」の話/Vol.9

「減価償却」については上記のブログで解説しました。

「消耗品費」として「経費」に出来るのは10万円未満10万円以上の場合は「減価償却費」になるんでしたよね。

これが「青色申告」の場合、30万円未満まで一括でその年に経費化出来る可能性があります。

どういう事かと言うと、例えば僕が新しくトロンボーンを「299,900円」で購入した場合、「白色申告」では「10万円未満」までしか「消耗品費」として計上出来ず、複数年に渡り減価償却する事になり、「法定耐用年数5年」で割ると、「約6万円」しかその年の経費にする事は出来ません

ですが、「青色申告」をすれば、「6万円」ではなく、「299,900円」の全額をその年の経費に出来るので、その分、所得を下げ、結果、納税額を減らす事が出来ますよね!

※上限は年間で合計300万円まで。

赤字を3年間繰り越せる!

あまり知られていないかもしれませんが、実はこれも大きなメリットなんです!

そもそもフリーランスは「収入の浮き沈みが激しい働き方」だと言えますよね。

もしも「仕事がほぼ大手音楽教室のみ、稼働する教室数も生徒数も変わらない」というような方は安定していると思いますが。

ちなみに、プロ野球やサッカー選手の場合、昨年まで1軍、J1で1億円稼いでいたとして、今年引退、コーチや解説者の仕事などもなく、実質無職になったとしたら、年収は0円です。

年収0円の年に、年収1億円の時の所得税や住民税を納める事になります。

もちろん貯金をしていれば良いのですが、「現役時代に金銭感覚がおかしくなってお金を使い過ぎて、引退後の納税に困った」というようなアスリートの話をテレビなどで耳にした事があるかもしれません。

アスリートほどではないにしても、音楽家さんの場合でも、もしかしたら来年はミュージカルやアーティストさんのツアー、スタジオ(レコーディング)の仕事がたくさん入り、年収(所得)が大幅に上がる可能性がありますよね。

「白色申告」の方は、仮に今年が20万円の赤字で、来年20万円の黒字になったら、この20万円に所得税がかかるのですが、「青色申告」をしていれば「繰越」(相殺)が出来て、所得税がかかりません。

これが3年繰り越されるので、例えば2023年、2024年、2025年が20万ずつの赤字で、来年60万円の黒字になっても所得税がかからない事になりますよね!

※毎年「確定申告」で損失申告を出す必要あり。

家族に給料を払い、賃金を経費に出来る!(青色専従者給与)

「青色専従者給与」とは、家族に仕事を手伝ってもらい、その分の給与を支払って経費にする事で所得を減らして節税出来る制度です。

利用するための条件は以下の通り

配偶者や親族である事(6親等以内の血族、3親等以内の姻族)

その年のうち6ヶ月以上、事業に専念している事

「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出している事

例えば、旦那さんがフリーランスの音楽家さんで、奥さんは結婚前は会社で事務をやっていた、デザイナーさんだったというような場合で、結婚後、退職して子育てをしながら旦那さんのお仕事(会計事務・ウェブ制作・チラシ制作 etc.)を手伝っていれば、届け出を出して、奥さんを雇っている形にすれば、その分が経費になり(所得から差し引く事が出来)、結果、節税になるわけですね。

(リタイアした)親御さんにお願いする手もあるかも?

(アルバイトのいない)家族経営のラーメン屋さんや居酒屋さんが潰れにくいのは、この制度をうまく活用出来ているからかもしれません。

ちなみに、例えば旦那さんはヴァイオリニスト、奥さんはピアニストのように、お2人とも演奏家の場合、それぞれ独立した事業主になるので、残念ながらこの制度の活用は難しいです。

専従者に支払う給与は、仕事内容に見合った妥当な金額で、毎月定額でなければいけないので気を付けてください(年末だけまとめてドカンと支払う、といったボーナス的な支給は認められないので注意が必要)。

身内であっても「銀行振込で支払う」「給与明細や支払簿を作成する」「必要に応じて源泉徴収票を発行する」など、「支払いの証拠」をきちんと残す必要もあります。

まとめ


いかがでしたでしょうか。

「青色申告にしたほうが得、節税になりそう!」と思われた方も結構いらっしゃるのでは?

ちなみに、「青色申告」を始めるには、税務署にその年の年始から3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要があるので、残念ながら今年(2025年)の分は「白色申告」のままです(例外:開業初年度は開業から2ヶ月以内)。

今年はまず「税制」を学び、理解し、「白色申告」をしながら、可能な「経費」や「控除」で節税をし、(後日解説する)クラウド会計に慣れ、「青色申告」の必要性を感じた場合、2026年の年始から3月15日までに申請し、2026年分から切り替えると理想的ではないでしょうか。


音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹

藤井裕樹/音TOWNプロデューサー

【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』