Vol.2 確定申告の基本とフリーランス音楽家の節税ポイント

音大卒の方からよく聞く声のNo.1と言っても過言ではないのが「学生のうちに確定申告について教わっておきたかった」という話。

きちんと申告している方も多いと思いますが、手探り・独学、実は申告していないという方も多いと思うので、この記事で基本的なポイントを解説していきます。

※最後にとっておきのポイントもお伝えします!

「音TOWN」(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。

このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!

お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!

この記事を読むと役に立つ人は!?

・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・初めて確定申告を行う方
・節税方法について知りたい方

読んだ後に解消される不安は!?

・確定申告の基本が理解出来る
・確定申告の必要性が分かる
・音楽家に認められる経費の具体例が分かり、節税のポイントが把握出来る

確定申告とは何か


確定申告とは、1年間の所得を税務署に申告し、納税額を確定する手続きの事。

フリーランスとして収入を得ている場合、自分で収入や経費を計算し、所得税を申告・納付する必要があります。

※サラリーマンやアルバイトなど、雇用契約・給与所得の方は会社がやってくれます(年末調整)。

なぜ申告する必要があるのか

確定申告を行う理由は主に以下の3つです。

  1. 法的義務:所得税法により、※一定の所得がある場合には申告が義務付けられています。
  2. 正確な納税:申告する事で、正確な納税額が確定します。過少申告や無申告は、罰金や追加の税金を支払うリスクがあります。
  3. 税金の控除・還付:必要経費や各種控除を適用する事で、納税額を減らす事が出来ます。また、源泉徴収されている場合には、払い過ぎた税金が還付される事もあります。

(フリー・寄せ集めの)オーケストラのお仕事、音楽教室に雇われて講師として仕事をしている場合、音楽事務所からの依頼で演奏を行う場合(雇用契約でなく、業務委託契約の場合)などは通常、報酬から「源泉徴収」されているので(先に定額の所得税を納めているので)、所得が低い場合「申告によって還付される」(お金が戻ってくる)のが一番のメリットと言えるかもしれません。

まあ、元々は自分のギャラから引かれていたものなんですが、還付金があると「1年に1回のボーナス」のような気分になり、ちょっと嬉しいですよね(笑)。

ちなみに「※一定の収入がある場合」というのは「所得が20万円を超える場合」が該当します。

たとえば自宅でピアノを教えていて、現金でお月謝をもらっていたとしても、年間で20万円以上の所得があったら申告の義務があるので気を付けましょう!

※給与所得の収入金額の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄附金控除及び基礎控除を除く) を差し引いた残りの金額が150万円以下で、さらに各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円以下の方は、申告は不要です。

白色申告と青色申告の違い

確定申告には主に「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。

それぞれの特徴やメリット・デメリットについて見ていきましょう。

白色申告

特徴:簡単な記帳で済む申告方法です。

メリット

  • 手続きが簡単:複雑な書類作成や事前の届出が不要です。
  • 記帳の手間が少ない:簡単な帳簿をつけるだけで済みます。

デメリット

  • 節税効果が低い:青色申告に比べて控除が少ないため、節税効果が低いです。

青色申告

特徴:事前に申請が必要で、より詳細な記帳が求められる申告方法です。

メリット

  • 特別控除がある:最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。
  • 損失の繰越しが可能:赤字を3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺出来ます。
  • 家族への給与を経費に出来る:家族従業員に支払う給与も経費として計上可能です。

デメリット

  • 手続きが複雑:事前に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。
  • 記帳の手間が増える:複式簿記による詳細な帳簿の作成が求められます。

節税のために気を付けるべき点


フリーランス音楽家が節税するためには、適切な経費の計上が重要
です。

以下は、音楽家が認められる経費の一例です。

  1. 消耗品費もしくは減価償却資産:ピアノやサックスなどの楽器、録音機材やPA機材など、ステージ衣装の購入費用は経費として計上出来ます(金額や耐用年数によって変わります)。
  2. 賃借料:練習やレコーディングに使用するスタジオのレンタル料も経費になります。
  3. 旅費交通費:ライブやリハーサルへの移動にかかる交通費やガソリン代、宿泊したホテル代も経費として認められます。
  4. 広告宣伝費:自分の活動を宣伝するための広告費用やウェブサイトの運営費用も経費として計上出来ます。
  5. 通信費:インターネットや携帯電話の料金も、仕事に関連する部分は経費として認められます。
  6. 地代家賃自宅を仕事場として使用している場合、その部分の家賃や光熱費の一部を経費として計上する事が可能です。ただし、具体的な面積や使用割合に基づいた計算が必要です。
  7. 接待交際費音楽関係者との打ち合わせやイベント参加のための飲食費も、接待交際費として経費に含めることが出来ます。ただし、個人的な飲食費は対象外となります。
  8. 社会保険料控除:別記事で紹介予定。このほか「小規模企業共済掛金控除」「生命保険料控除」というのもあります。

サラリーマンより収入が不安定なのは前回の記事でも紹介した通りですが、その分フリーランス(個人事業主)は経費として所得から控除出来るものが多く、適切に申告する事で節税になりますので、きちんと把握しておきたいですね。

プロに頼むのもアリ!


確定申告は少し複雑ですが、基本を押さえ、適切な経費を計上する事で、無理なく節税する事が出来ます。

ある程度年収のある方は税理士さんに頼むのもアリかもしれませんね。

僕も若い頃は自分で申告していましたが、30代半ばからは簡単な帳簿(収入や交通費など)を付け、レシート、領収書は保管をしておき、確定申告(青色申告)だけ税理士さんにお願いしていました(1年分を税理士さんに渡し、3/15までに申告していただいていました)。

結果、白色申告より控除額も大きく、自分でやる手間やストレスも減り、節税にもなり、音楽に集中出来ます!

(今は会社経営をしているので、会計ソフトを利用しつつ、経理は税理士さんにほぼ丸投げ状態です)

備えあれば憂いなし!


ちなみにコロナ禍で「持続化給付金」というのがあったのを覚えていますか?

フリーランス・個人事業主の場合は一律100万円が支給されたんですけど、支給の条件の一つが「確定申告をしている事」でした。

ですので、先ほど例に挙げた

「自宅でピアノを教えていて確定申告をしていなかった人」
「演奏の仕事をしているけど、報酬(謝礼)を現金でもらっていて確定申告をしていなかった人」
「源泉徴収をされている仕事をしているのに確定申告をしていなかった人」

などは対象外となり、100万円を受け取る事が出来なかったんですよね(受け取るために慌てて確定申告をしている方も多かったようです)。

「確定申告をしていない = 納税をしていない = 国から事業者として認められていない」とも言えますね。

「フリーランス」ではなく「フリーター」だと社会から認識されているようなもので、音楽家・ミュージシャンが世間からナメられる大きな要因になっている気がします。

コロナ禍のような事はもう起きてほしくないですが、可能性としてはまた違ったウイルスでパンデミックが起きる事もあるかもしれませんし、日本にいる以上、地震などの自然災害は避けては通れません。

こうした「有事」には音楽家・ミュージシャンは真っ先に仕事を失う職種でもありますので、きちんと確定申告、納税をし、公的な支援を受けられるようにしておく事はとても大切ではないでしょうか。

音楽家・ミュージシャンにとって確定申告とは?


最後に一つ、あまり他のサイトで語られていない「確定申告をするメリット」をお伝えさせてください。

それは、

1年に一度、自身の仕事内容や働いた日数(時間)、収入や所得を振り返る事で、現在のキャリア上のランク・ポジションを把握出来る

という事ではないかと思います。

たとえば、「今年はありがたい事に、毎日休みがないくらいお仕事がもらえて、年収は300万円だった」とします。

これが20代前半の方なら合格点と言えるかもしれませんね。

ですが、40代半ばだったらどうでしょう?

(条件によって数値が違うようですが)令和4年のデータで40代の平均年収は男性で約618万円、女性で約427万円らしいので、大きく下回っている事がわかります。

(養っている)家族がいるか、どこに住んでいるかや、※自身の価値観・人生観などによっても違いますが、今の日本で40代半ばで年収300万円だと結構苦しい方も多いのではないでしょうか。

※ですので、「自分はどう生きたいか」「人生における優先順位は?(家族なのか、お金なのか)」といった「自分軸」が大切になります!

フリーランスはサラリーマンと違い、年齢と共に確実に年収が上がっていくわけではありませんよね。

20代前半では同期の新卒サラリーマンの友人より稼げていたのに、30代になったら抜かれていた、なんて話もよくあります。

「今年はたくさんお仕事をもらえたけど、正直単価が安すぎる。来年はもう少し自分の価値・生産性を上げられるように頑張ろう!」

このような事を1年に一度振り返り、お仕事をくださった方に感謝し、来年の計画を立て、実行する。

フリーランスというのは、こういった事も自分主体で行う必要があるんですね(「自分主体の生き方をしやすい」とも言えますね!)。

「収入」(売上)と「支出」(経費)のバランスの可視化は経営の学びでもあります。

また、「休みなく働く」というのは若いから出来る事でもありますよね。

僕自身も、20代、30代前半で出来た無理はきかなくなってしまったので、今は「徹夜で音楽制作をする、徹夜で執筆しないと間に合わない」といった仕事は一切受けていません(極力20時頃にはPCの電源を切り、スマホも触らない努力をしています)。

以前より「家で何もしない日」を作ったり、「陶芸など、音楽や仕事と関係のない事」をやったり、「旅行」に行ったりといった時間も大切にするようになりましたね。

毎日仕事に追われがちなフリーランス、特に日々のコンディションを保つために膨大な練習時間が必要な音楽家さんは、「“自分軸で自分の人生を生きているか”を見直す事」を忘れがちです。

年末年始のほか、1年に何度かそういった時間を取ると良いと思いますが、「確定申告の時期」もそれに充てると良いと個人的には感じています♪


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音大生のための“働き方”のエチュード/著:藤井裕樹
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藤井裕樹

藤井裕樹/音TOWNプロデューサー

【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:メンタル心理インストラクター®/体幹コーディネーター®』