フリーランス音楽家のための分かりやすい「請求書」の書き方【前編】/Vol.11

今年は3月17日が「確定申告」の提出期限でしたが、無事に間に合いましたか?

すでに「還付金」が振り込まれ、「ちょっとしたボーナス気分」を味わっている方もいらっしゃるかもしれませんね(笑)。

さて、「確定申告」がひと段落した今月からの「音TOWN.Biz」は、フリーランスの音楽家さんがさらに「お金・ビジネス」に強くなれるよう、さまざまなお役立ち情報をお届けします!

今回、次回は「確定申告」 と同じく「学生(音大)時代に教わっておきたかった」という声も多い、「請求書の書き方」

『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。

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このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!

お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!

この記事を読むと役に立つ人は!?

・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・実は「請求書」の書き方がよく分かっていない方
・税金やインボイス制度についてきちんと理解しておきたい方

読んだらどんな良い事が!?

・「請求書」を書ける事の重要性(本当の目的)が分かる
・税金やインボイス制度の仕組みが分かる
・結果、音楽以外の「ビジネススキル」が向上する

そもそも「請求書」とは!?


めちゃめちゃざっくりと説明すると「私がいついつ、こんな仕事をいくらでやりましたので、(場合によっては適切に税金を引いて)、私の口座に入金してください」と、クライアントさんにお願いする書類です。

同じサービス業でも、例えば、あなたが楽器店で買い物をする際に、店員さんがわざわざ「請求書」を発行する事はないですが(もちろん、スーパーやレストランも)、音楽家さん(あなた)が事務所を通して「演奏というサービスを提供した場合」や、「自動車の下請けの工場が、元請けに頼まれて部品を作って納品した際」なんかには「請求書」が必要になります。

僕の印象、感覚では、音楽・エンタメ業界ではなく、一般的な会社同士のやり取り(B to B = Business to Businessの略)では、(「見積書」「請求書」「領収書」あたりは)割と普通、常識的に使われている気がしますね。


※余談ですが、コロナ禍の補助金の中には、事業報告・証明で「見積り依頼書」「見積書」「納品書」「検収書」「請求書」「領収書」など(これでも一部です)を提出しないといけないものもあり、「一般社会では(こんなに大変な)書類のやり取りをしているのか…」と愕然とした記憶があります。

なぜ「請求書」が必要かと言うと、会社同士のやり取りでは、「口約束でもめないため」「適切な納税のため」などの理由で、「きちんと書面に残す必要があるから」ではないでしょうか。

※音楽・エンタメ業界だけでなく、フリーランスの声優さんやデザイナーさんへのお仕事の依頼でも「口約束」は問題になっています。「請求書」だけでなく、事前のやり取りから電話(口頭)でなく、メール、LINE、messengerなどを使い、ギャラの金額や拘束時間などの「約束事」を書面で残しておく習慣を付ける事を強くオススメします!(電話でご依頼を請けた場合でも「同じ内容をメールでいただけますか」とお願いする事!)

なぜ音楽家さんにも「請求書」が必要なのか?


そもそも「請求書」を提出しないとギャラがもらえない!?

僕の経験や知識では、クラシックの現場は比較的「請求書」の提出を求められないようです。

「オーケストラの仕事」「音大の講師」をされている僕と同年代やそれより上の方でも、「請求書を書いた事がない」という方が周りにもいらっしゃいますね。

ちなみに、僕がレギュラーで出演していた「テーマパーク」も請求書は不要でしたし、講師を務めていた「ヤマハ音楽教室」も不要でした。

おそらく、オーケストラやテーマパーク、音大や大手楽器店の講師は所属している人数が多く、また、経理・事務スタッフも常駐しているため、先方が「支払い指示書」や「精算書」などを発行し、「音楽家さんの手間を省いてくれている」のかもしれません(音楽家さんは事務が苦手・お金に弱いので、代わりにやってあげようという「情」も入っているような??)

僕が音楽家(演奏家)時代に請求書が必要だった現場は、

音楽事務所を通した、アーティストさんのツアーサポート(全国ツアー)

音楽事務所を通した、アーティストさんのバックバンドでのテレビ出演

テーマパークのお仕事で、現場のプレイヤーではなく、アレンジャーとして制作のお仕事をいただいた時(事務所経由ではなく「本社(◯リエンタルランド)」と直接契約でお仕事をしたため/この際は事前の「見積書」も必要でした)

一般企業さんからのご依頼でイベントやパーティーに出演した時

スタジオ(レコーディング)のお仕事

などでしょうか。

これらの現場、お仕事の場合、後から「請求書」を提出しないとギャラが振り込まれないので、「請求書を出してください」とマネージャーさんや会社の方に言われた場合は「絶対に必要な作業」という事になりますよね。

※通常、先方から「◯◯さん、請求書が出てないので入金が出来ません」と連絡がくる事はなく、「ラッキー!」と思われてるかはともかく(笑)、放置されます!(タダ働きになります!)

もしもあなたが音大を出て、幸運にもオーケストラに入団し、大手の楽器店や音大の講師にもなる事が出来て収入も安定、「請求書なんて書く必要がない」という方はそれでも全然問題ないと思いますが、もしもクラシックだけではなく、ポップスやスタジオ、演奏だけでなく制作(作編曲)の現場、一般企業さんからイベントのお仕事をいただきたい(例:企業の周年パーティーで弦楽四重奏 etc.)というふうに、「仕事の幅を広げていきたい」「収入を増やしていきたい」と思うのであれば、「請求書を正確に書ける」というスキルはマストなんじゃないかと思いますね。

※2023年10月から始まった「インボイス制度」によって、消費税が明記された「的確請求書」が必要になったため、これまで以上に大事なスキルになってきていると感じます。


フリーランス音楽家が理解しておきたい「インボイス制度」について/Vol.3

音楽家さんが“ナメられない”ために!


先述の通り、一般企業、事務作業のある職場では「請求書の作成」くらいは当たり前なので、「PCが使える」「Wordで文章が打てる」程度の話なんじゃないかと思います。

今時「パソコンが使えない」「ワード・エクセルが使えません」という方は、就職すら難しい可能性が高いですよね。

つまり、(音楽)事務所や一般企業さんをクライアントにした場合、「請求書」が書けないと、「音楽家・ミューシャンってやっぱり浮世離れしていて、一般常識がない人たちなのね…(音楽以外、何も知らないのね…)」というような目で見られる事になりかねません。

ちなみに、「才能が突出している方」はもちろん、「請求書」を書くスキルなんて要求されないので、何の問題もないと思いますよ!

例えば、他業種ですが、大谷翔平選手はおそらく「請求書」の書き方を知らないし、必要もないんじゃないでしょうか。

元通訳の水原一平氏に26億円盗まれても、年収が1000億円あるようなスーパースターですから。

さすがに「野球少年・ピュア過ぎる」など、多少叩かれてはいましたし、本人も辛かったでしょうが、現在の活躍を見ても、落ち込んでいる、困っている様子はありませんよね。

すみません、話が逸れました(笑)。

何が言いたかと言うと、、

「音楽家・ミューシャンってやっぱり浮世離れしていて、一般常識がない人たちなのね…」

みたいに思われると、結果、「下に見られる」「ナメられる」ので、「安い仕事を請けやすくなる」とか「もうちょっとギャラを上げてください」というような「交渉」が出来ない(自分の価値・ランクを上げていけない)んじゃないかと思うんですよね。

個人的にはこういったタイプの方は「請求書を正確に書けない方が多い」という印象があります(請求書が書けないから「お金・ビジネス」に弱いのではなく、「音楽・演奏」以外への意識やスキルが低く、「お金・ビジネス」に弱い方は結果的に「請求書」を正確に書けない方が多い)。

「請求書を書く」というスキルは、実は単なる「手段」に過ぎず、本当に大切な「目的」の部分は、

「きちんとビジネス・お金に強くなり、一般企業・社会人にナメられず、ギャラの交渉も出来る、価値を上げていける音楽家・ミュージシャンになる事」

じゃないでしょうか。

もちろん「お金が全て」ではありませんが、結果、ストレス度の高い(ブラックな)仕事や人間関係が減り、収入もアップするのですから、「幸福」につながっていくというのが僕の考えです。

というわけで、今回は「請求書とは何か」「なぜ請求書を書けるようになったほうが良いか」について解説しました。

次回の【後編】では「請求書の書き方の実践編」をお届けしますね!


音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹

藤井裕樹/音TOWNプロデューサー

【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』