音楽教室だけではない!?フリーランス音楽家が「搾取」されないために知っておくべきお金の話/Vol.31
ここ1年ほどで、大手を含む「音楽教室を営む事業者」が相次いでフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)に基づく勧告を受けたのをご存知でしょうか。
個人的に、これまでの講師経験、演奏家/作編曲家経験を踏まえると、「音楽教室事業」は足元を見られやすい傾向があり、また、システム上こうして露呈しやすく、「演奏・制作事業」も同じような事が起きがちだが、バレにくい(告発もしにくい)と言える気がするんですよね。
今回からは、フリーランスの音楽家さんが「搾取」されないために、ビジネスのからくりや対策方法について解説してみようと思います♪
※この問題は音楽業界だけでなく、芸能界・バレエ・演劇・漫画家・アニメ制作・工場の下請けなどにも言えると思いますので、アマチュアミュージシャンの方でも、ご自身のお仕事に関係のありそうな方はぜひ読んでみてください!
『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、クラシック・ジャズ・ポップス・吹奏楽などと関わりながら個性豊かに生きる「人」「お店」「団体」「会社」や、音楽家に必要不可欠な「お金・健康」の情報をお届けしています♪
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このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ! →詳しくはコチラ
この記事を読むと役に立つ人は!?
・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・一昨年施行された「フリーランス法」がよく分かっていない方
・ご自身が受け取っている報酬・ギャラの金額に不安、不信がある方
読んだらどんな良い事が!?
・「フリーランス法」の概要が分かる
・法的な知識を超えて「自分の身を守る方法」が分かる
・結果、収入アップや幸福度アップにつながる可能性がある
大手楽器店が起こしたフリーランス法の違反行為とは!?
実は昨年、「音TOWN.Biz」でも「フリーランス法」について解説しました。
この時は(2025年6月)、大手の「S楽器」が違反した事を受けての注意喚起だったのですが、2026年5月には昨年とは別の「Sミュージック」、そして6月にはピアノメーカーとしても有名な「K楽器」の違反が判明し、公正取引委員会から是正勧告を受けたんです。
(これだけ続くと、氷山の一角のような気がしてしまいますよね…)
「S楽器」では、取引条件の明示や報酬の未払い、「無償」での体験レッスンなどについて勧告。
「Sミュージック」では、多数のフリーランス講師に対して無料体験レッスンを無償で実施させていた事が問題に(対象者は1,600名以上に及び、無償分の対価を支払うよう勧告されています)。
さらに「K楽器」では、取引条件の明示不足や報酬未払いだけでなく、「買いたたき」に該当すると判断されたケースも含まれました。
※「買いたたき」とは、下請事業者に対し、通常支払われる対価と比べ、著しく低い下請代金の額を不当に定める事
大手企業であっても、フリーランスとの契約や報酬に問題が生じる事が明らかになった以上、「有名企業だから安心」と考える時代ではなくなったと言えるのではないでしょうか。
もしくは、「以前から(一部の)有名企業であっても、こんな事を平然とやっていて問題にならなかったが、SNSやAIの進歩で露呈してくるようになり、結果ようやく法整備も追い付いてきた」と言える気がしますね。
(SNSに「体験レッスンが無償なんですけど、これっておかしいですよね?」などと投稿すれば拡散されたり、コメントをくれる人がいる/法律の専門知識がなくても、ChatGPTなどに質問をすれば「それ、フリーランス法違反の疑いがあるので、どこどこに連絡すると良いですよ!」などと教えてもらえるようになったため)。
※ちなみに「Sミュージック」は、自社の教室/スタジオを持っていないにも関わらず、一般の貸しスタジオなどを「Sミュージック◯◯店」のように表記し、ネット広告に力を入れて全国展開しているように見せているタイプの教室。このタイプの教室の問題点については次回解説します!
なぜ音楽業界では同じような問題が起きやすいのか?
僕は、このような問題が起きやすい背景に、「音楽家(芸術家)がお金について学ぶ機会が少ない事が大きい」と考えているんですよね。
この件については「音TOWN.Biz」だけでなく、経営者でもあるインタビュアーさん(アマチュア音楽家さん)も同意見で、警鐘を鳴らし続けてくださっています。
『井生俊介:「僧侶 x 経営者 x 経理 x 宅建士」“四足”のわらじの生き方♪』
参考:「音大は「飯を食う事」を教えていない!?」
『大野充明:「三菱UFJ銀行支店長→山野楽器取締役」異色の経営者から学ぶ♪【後編】』
参考:「フリーランスの音楽家に伝えたい事」
音楽大学や専門学校では、演奏技術や音楽理論を学ぶわけですが、
・契約
・報酬
・税金
・相場
・利益率
・原価
・費用対効果
といったビジネスの知識を体系的に学ぶ機会は決して多くないのではないでしょうか。
卒業して現場に出てから、先輩などから何となく教わっていく事も多いため、
「昔からこういうものだから」
「みんな受けている仕事だから」
という理由だけで、不利な契約や極端に安い報酬を受け入れてしまうケースも少なくありません。
悪意がある企業だけでなく、「業界の慣習」がそのまま続いている場合もあるでしょう。
だからこそ、発注側だけでなく、受注側も知識を持つ事が重要なんですよね。
音楽教室の報酬・マージンは簡単に計算できる!

音楽教室の報酬の支払いって、実はかなり分かりやすい構造なんです(だから発覚してニュースになっているんでしょうね)。
例えば、生徒さんが毎月いくら月謝を支払い、そのうち講師にいくら支払われているのか。
その割合を計算すれば、自分が売上の何%を受け取っているかはある程度把握できますよね。
(仮に「生徒さんが月謝を1万円支払っていて、報酬額が3,000円だったら30%」)
もちろん、教室側には、
・広告宣伝費
・家賃
・受付スタッフ(人件費)
・システム費
・教材開発費
・管理費
など、様々なコストがあります。
そのため、単純に取り分だけを比較して「高い・安い」を判断する事はできませんが、判断材料にはなるじゃないですか。
ちなみに、教室によっては「交通費別途支給」のところと「交通費込み」のところがありますよね。
仮に1日にまとまってではなく、1時間の1レッスンしかない状態で報酬が3,000円、ちょっと遠方まで通勤して交通費が2,000円かかったとしたら、1時間のレッスンのために片道1時間かけて通い、つまり、3時間拘束されて、時給換算すると最低賃金を下回る1,000円の儲けにしかならないという事です。
このような状況の場合、「明らかにブラック」と言えるのではないでしょうか。
演奏料/制作費は把握が難しい…

ところが、イベント出演やアーティストさんのバックバンド、レコーディング、作編曲、制作案件などになると、ちょっと事情は変わります。
クライアントと音楽家の間に事務所や制作会社、エージェントなどが入るケースでは、大元の発注金額が見えません。
つまり、自分が受け取っている報酬が適正なのか判断しにくいんですよね。
もしかすると適正なマージンかもしれませんが、必要以上の中間マージンが差し引かれているケースが存在する可能性も否定できません。
見えないからこそ、注意が必要なんです。
自分の価値を「数字」で説明できますか?

フリーランスが身を守るためには、「感覚」だけではなく「数値化」を意識すると良いのではないでしょうか。
例えば、
・経験年数
・指導実績
・演奏実績
・専門性/資格
・地域相場
・業界相場
これらを把握しているでしょうか。
自分の市場価値を数値化できれば、
「この金額では受けられません」
という判断もしやすくなりますよね。
逆に、自分の価値が分からないと、提示された金額をそのまま受け入れるしかありません。
価格交渉は、自分の価値を理解している人ほど行いやすくなるんです。
安すぎる仕事は断る勇気も必要!

音楽家は真面目な人が多く、「仕事を断るのは申し訳ない」と感じる方も少なくありません。
また、こうしてお伝えしている「お金への学び、理解が乏しい事」の他、「好きな事を仕事にできているだけで幸せ」と考える方が多いのも“ある意味”問題だと考えます。
極端に条件の悪い仕事を受け続ける事は、自分だけの問題ではなく、その価格が業界の相場になってしまえば、後に続く音楽家も苦しくなります。
適正な対価が支払われる市場を作るためには、
「受けない」
「断る」
「距離を置く」
という選択も、ときには必要なのではないでしょうか(心身の健康を保つためにも重要!)。
もちろん、経験を積むために報酬(ギャラの金額)より実績(経験)を優先する時期もあるでしょう。
ただし、その判断は「知らずに受ける」のではなく、「理解した上で選ぶ」事が重要。
時給や最低賃金は判断材料になる♪

フリーランスのお仕事は基本的に「業務委託」で、アルバイトのような「時給」ではないのですが(「成果」に対して報酬が払われる形で、「時間に対して」ではないのですが)、
「自分の仕事を時給換算したらいくらなんだろう?」
という感覚はかなり役に立つのではないでしょうか。
本来、音楽のような「特殊技能を身に付けた職業」を時給換算したら最低賃金並みというのはおかしい事なんです!
練習時間までを計算に入れるかどうかは難しいところですが、仮に入れた場合、とてつもなく低い時給になっている可能性もあります。
また、レッスンにおいても、個別の生徒さんのために時間外で楽譜のコピー、編曲を行っていたり、質問などをLINEで返答したりしている場合も同様ではないでしょうか。
※ただし、演奏技術以外のプロとしての基本的な能力(時間や健康管理/コミュニケーション能力 etc.)が著しく欠けていると、社会では厳しい評価を受けるのはある意味当然の事です。
参考:「令和7年度地域別最低賃金の全国一覧」
※この時点で、一番高い東京都が1,226円、一番低い沖縄県などが1,023円
まとめ|演奏力だけでなく、お金の知識も武器になる!

フリーランス法が施行され、大手企業への勧告も続いています。
これは決して一部企業だけの問題ではなく、音楽業界全体が「契約」や「報酬」のあり方を見直す時期に来ている事を示しているのかもしれません。
音楽家は演奏技術を磨く事も大切ですが、それと同じくらい「お金の知識」を身につける事も重要。
自分の価値を理解し、相場を知り、契約を確認する。
その積み重ねが、自分自身のキャリアを守り、ステップアップしていく事につながるのではないでしょうか。
「音TOWN.Biz」では今後も、フリーランス音楽家がお金や働き方で損をしないための情報を発信していきます!
音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表取締役
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者
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