一般社団法人さいたまスーパーシニアバンド:音楽は社会課題を解決できるのか?|法人化と官学連携で「健康寿命延伸」に挑戦!
市民バンドや社会人吹奏楽団の多くは、「任意団体」としての活動が一般的。
そんな中、2008年に行政主催事業としてスタートした 「さいたまスーパーシニアバンド」は、2019年に「一般社団法人設立」という選択をしました。
なぜ、アマチュア音楽団体が法人化を選んだのか。
その背景には、「音楽活動を趣味にとどめず、社会貢献や公共性を伴う事業として継続する」という決意・使命がありました。
この記事では、代表理事の川辺明里さん、有本守さんへのインタビューを通して、音楽団体が法人化する意義と、その先に広がった可能性について掘り下げます!
『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、クラシック・ジャズ・ポップス・吹奏楽などと関わりながら個性豊かに生きる「人」「お店」「団体」「会社」や、音楽家に必要不可欠な「お金・健康」の情報をお届けしています♪
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この特集は、音楽業界を陰で支える企業の経営者さんや、各分野のエキスパートをご紹介するコーナー。経営理念やノウハウ、専門知識から、何かしらの“学び”や“ご縁”が生まれれば幸いです!
この記事を読むと役に立つ人は!?
・音楽という特技を生かして社会貢献がしたいと思っている音楽家・講師・愛好家の方
・さいたま市やときがわ町周辺で音楽(吹奏楽)活動ができる場所を探している方
・地方自治体で文化事業や高齢化対策に関わっている担当者の方
読んだらどんな良い事が!?
・音楽が地域の活性化や社会貢献になる可能性を知る事が出来る
・好きな音楽で地域のコミュニティに属し、人生が豊かになる
・少子高齢化による社会問題解決の一助になる
任意団体から一般社団法人へ

<代表理事の川辺明里さんと有本守さん/指導者の織田準一さん(オリパパ)のご自宅にて>
藤井:2008年に「さいたま市文化振興事業団」の主催事業として始まった「さいたまスーパーシニアバンド」(以下シニアバンド)は、2019年に「一般社団法人」となったそうですね。
アマチュアの社会人バンド(吹奏楽団)が法人化するってレアだと思うんですけど、どのようないきさつだったんでしょうか。
川辺:いわゆる一般バンド/市民バンドと違って、「市の外郭事業団」主催で始まったという特殊性が一つの理由と言えるかもしれません。
今回取材していただいた「ときがわ子ども音楽倶楽部」(以下子ども音楽倶楽部)の設立のような社会貢献事業を企画・運営するにあたり、「任意団体」のままで「法人格」がないと、社会的信用が低いし、補助金/助成金などの応募資格すらなかったりするじゃないですか。
有本:私が「公益法人」に勤めていて、こういった法人を設立する仕事もしているんです。
藤井:有本さんのような方が組織にいらっしゃるのは心強いですね。
アマチュアバンドって皆さん職業は別にあるので、いろんな分野のプロフェッショナルの集まりと言える気がします。
川辺:「NPO法人(特定非営利活動法人)」が良いのか、何が良いのか、税金の事、やりたい事業は何なのかなどを考えた結果、「一般社団法人」が私たちには合っているのかなと。
有本:比較的簡単に設立できるし、お金もかからないし、決算さえきちんとやっていればいいんです。
藤井:僕は「若い音楽家サポートのNPO法人」の音楽ディレクターや代表理事を務めていた事があるんですけど、NPOは設立・運営は結構大変でしたね。
川辺:それから、さいたま市は「一般社団法人」で非営利の場合、住民税(市民税)がかからないんですよ。
有本:全国的にも珍しい優遇措置なんですよね。
川辺:私たちはさいたま市が拠点の団体ですし、こうして税の優遇が受けられるので、市内に住所があったほうが良いとなり、
「じゃあ、どこにしよう?」
となって、
高齢者が多いシニアバンドの中では比較的若い私に白羽の矢が立って、
「川辺さんが一番長生きしそうだからそこでいいじゃん?」
という事で、私の自宅が法人登記の住所になっているんです(笑)。
藤井:個人情報が公開されてるんですね(笑)。
川辺:現在は「一般社団法人さいたまスーパーシニアバンド」という法人の事業の中に「シニアバンド」や「子ども音楽倶楽部」があるという位置付けになっています。
吹奏楽部の「地域展開/地域移行/地域連携」を目指して

<「ときがわ子ども音楽倶楽部」のコンサートの様子>
藤井:「子ども音楽倶楽部」はどのようないきさつで始まったんでしょうか。
川辺:オリパパの移住先でたまたまご縁ができたというのもあるんですが、我々シニアバンドが拠点にしているさいたま市と違ってときがわ町はとても小さな町。
中学校は町に2つしかなくて、吹奏楽部はそのうち1つにしかないんです。
同じ埼玉県内の「過疎化が進む地域」でも、
「都市部と同じ文化体験ができる環境を作れれば社会的に意義がある」
と考えました。
また、2023年度からは文化庁が
「公立中学校の部活動を地域クラブに移す取り組み(地域展開/地域移行/地域連携)の推進期間」
に設定していて、この取り組みは今でも続いているんですけど、その前段階として、2021年からは一般向けにも補助金事業の募集があったんですよ。
せっかく法人格を取得したので、申請したところ、採択されて「国の事業」として始まったのがこの「子ども音楽倶楽部」なんです。
実は一般向けは事業が2年で終わってしまったのですが、埼玉県からの文化活動に関する補助金、子どもたちからいただく月謝の2,000円を資金として、現在も小規模ながらなんとか活動を続けている状況です。
有本:各楽器のコーチや運営を私たちシニアバンドのアマチュアボランティアメンバーが行っているのも大きいですね。
こういった活動の継続には「場所の確保」「指導者の確保」「楽器の確保」が絶対条件で、どれか一つ欠けてもできないじゃないですか。
藤井:各楽器が全てプロのトレーナーであれば理想的ではありますが、都市部の私立の強豪校などでないと現実的には不可能ですからね。
オリパパとの対談でもお伝えしたんですけど、「楽器を教える」のはプロの音楽家のほうが優れているとしても「人生の先生」という観点ではシニアバンドの方のほうが経験値では優れている面もあるんじゃないでしょうか。
川辺:予算の関係で普段の練習にはオリパパ以外のプロは呼べていないのですが、毎年2月、同じくときがわ町に移住されたNHK交響楽団のティンパニ奏者、植松透さんなどにも来ていただいて、「子どもたちの発表の場+講師演奏」のような形で「本物の音楽を体感してもらう」機会を設けています。
※下部にコンサートのフライヤーがあります♪
藤井:素晴らしいですね!
こういった試み、団体が全国に広がると良いなと感じます。
これもオリパパとの対談でお話ししたんですけど、例えば「音大を卒業してから地元に帰った音楽家がこういった事業を地元で起こせば、本人は仕事になるし、地域には貢献になって、ウィンウィンになる」じゃないですか。
川辺:2021年に事業の立ち上げ時が文化庁の補助金事業だった事もあって、いろいろなところで紹介していただいたので、音楽之友社の「教育音楽」や、読売新聞にも取材していただきました。
今回『音TOWN』というネット媒体でもご紹介いただけるという事で、さらに全国の方に知っていただく機会になったら嬉しいですね。
科学で証明!音楽でQOL向上を♪

<「官・学連携プロジェクト」でのお披露目の様子>
藤井:他にも何か事業を行っているんでしょうか。
川辺:「官・学連携プロジェクト」というんですが、
「中高年や高齢者の方が音楽活動に取り組む事によって心と身体の健康に与える効果」
について調査しています。
藤井:これもまたレアでユニークな試みですね!?
川辺:城西大学の真野博先生にご協力いただいて、
「初めて楽器に触れて練習を重ね、半年かけて舞台に立つという過程で、どのくらいQOL(生活の質/人生の質)が向上するかや、幸せホルモンと言われる「オキシトシン」がどれくらい分泌されるか」
を科学的に分析していただく研究です。
実際にこれらが向上している結果が出たんですよ!
有本:「さいたま市文化振興事業団」に主催してもらい、国の補助金事業として3期に渡って行ったんですが、
来年度は「口腔フレイル」といって、
「高齢者の咀嚼(そしゃく)力や嚥下(えんげ)力(食べ物を口から食道、胃へと送り込む/飲み込む力の事)低下が、管楽器演奏によって予防できるのでは?」
という仮説を立てて、今度は明海大学の歯学部の先生に協力の打診をしたところなんです。
川辺:咀嚼力や嚥下力が低下したからと言って、お医者さんに
「顎の筋トレをやってください」
と言われても、楽しくなくて継続できないじゃないですか。
それが、
「管楽器を楽しく吹いていたら自然に鍛えられました/予防できました」
だったら一石二鳥ですよね。
藤井:僕の会社は今、「ストレッチ整体」というフィットネス事業も行っているんですけど、筋トレやストレッチが習慣にならないお客様には「ながら」(テレビを見ながらストレッチ/歯を磨きながら爪先立ち etc.)を推奨していますよ。
有本:昨今は「音楽が健康寿命の延伸に良い」という話もだいぶ注目されるようになってきましたよね。
これまでの実績もあってか、以前は新潟の大学がこちらに来られて「音楽と認知症の関係」を調べる研究に協力させていただいた事もありました。
最近は、音楽之友社の「バンドジャーナル」の取材も受けましたね。
最初からそこまで計算していたわけではありませんが、やはり「法人化して良かった」「様々な機会に恵まれた」と言えるんじゃないかと思います。
藤井:健康寿命が延伸すれば、社会保障費(医療費・介護費)の削減にもなるので、「官・学連携プロジェクト」もまた素晴らしい社会貢献事業ですよね!
川辺:実際シニアバンドのメンバーが、「楽器を演奏している事やコミュニティに属している事」が生きがいやモチベーションになって、病気を克服した話、病気の進行を遅らせた話がたくさんあるんですよ。
癌で余命半年と言われた方が、その後、約15年生きたという例や、脳梗塞を患った方が楽器演奏がリハビリとなって復活した例もあります。
有本さんもその一人で、心臓が4時間止まっていたんですよね。
有本:そうそう(笑)。
夕食の時間帯に自宅で心臓発作が起きて、娘に心臓マッサージをしてもらって、その後救急車で運ばれて助かったんです。
コロナ禍の真っ最中だったんですけど、ちょっと下火で、たまたまECMO(エクモ)が空いていて、すぐに使用できて助かりました。
藤井:ご本人的には今では笑い話かもしれませんが、すごいエピソードですね…
川辺:しかも、4時間も心臓が止まっていたのに何の後遺症もないんですよ。
有本:リハビリ中、
「またラッパを吹きたい!」
「もう一回みんなと合奏したい!ステージに立ちたい!」
という想いは、復帰の強いモチベーションになりました。
「音楽と健康寿命」は絶対関係があります!
僕が言うんだから間違いないでしょう(笑)。
川辺:「子ども音楽倶楽部」は、シニア世代にとっては、「高齢者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ/人生の質)の向上」になりますし、
子どもたちはここでコミュニケーションの学びとなって、初めはすごくシャイだった子が話せるようになったりと、双方にメリットがありますよね。
私たちのような社会人バンドが法人化した例や、社会課題を見付けながら事業計画をしている例はまだまだ珍しいかもしれませんが、その先駆けとして今後も活動を続けていきたいと思っています。
藤井:法人化するかどうかはともかくとして、個人的には『音TOWN』読者のフリーランスの音楽家さんたちにも、生き方や職業選択の一つとしてぜひ知っていただきたいお話でした。
今後の発展を楽しみにしています!
「ときがわ子ども音楽倶楽部」コンサートのお知らせ♪


一般社団法人さいたまスーパーシニアバンド(Saitama Super Senior Band)
2019年設立以来、従来より任意団体として活動していた吹奏楽団「さいたまスーパーシニアバンド」の事業の他、「ときがわ子ども音楽倶楽部事業」、(公財)さいたま市文化振興事業団との共催で開催した「官・学連携プロジェクト事業」、埼玉県内の教員らと共同で開催した「さいたま吹奏楽カーニバル実行委員会事業」など音楽をツールとした活動を行っています。
地域コミュニティの醸成、健康寿命の延伸、子ども達の健全育成などを目的としています。
藤井裕樹/音TOWNプロデューサー
【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』










一般社団法人さいたまスーパーシニアバンド(Saitama Super Senior Band)