諸藤一平:「オンライン音楽教室経営者 x ドラマー/作曲家」としての生き方♪【前編】
未だ「コロナ禍」真っ最中だった2022年、ドラマー/作曲家の諸藤一平さんは一念発起し、会社を設立。
オンライン音楽教室「オルコネ」の運営を始めました。
昨年から始まった「和歌山南陵高等学校」との提携では「オルコネ」のレッスンで単位が取得出来るそうで、おそらく現時点では唯一無二のシステムではないかと思います。
高校からのオファーが舞い込んだのにも「偶然ではない努力の積み重ね」がありました。
経営ノウハウも何もない「ゼロ」の状態からスタートし、100名ほどの講師を抱える教室に成長させた諸藤さんの人生はどのようなものだったのでしょうか。
(【前編】【後編】に分けてお届けします♪)
『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、クラシック・ジャズ・ポップス・吹奏楽などと関わりながら個性豊かに生きる「人」「お店」「団体」「会社」や、音楽家に必要不可欠な「お金・健康」の情報をお届けしています♪
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米軍キャンプでバンド活動をしていた父の影響で音楽に目覚める!

藤井:諸藤さんとは10年くらい前に何度か、とあるビッグバンドのお仕事で共演させていただきました。
「オルコネ」は僕も現場で共演させていただいた素晴らしいミュージシャンが講師として多数在籍している事もあって、注目していましたよ。
今日はお話を聞かせていただくのを楽しみにしています!
では、まず始めに音楽やドラムとの出会いについて教えてください。
諸藤:(昭和24年生まれの)父の影響が大きいですね。
僕は博多出身なんですけど、以前、福岡の春日原(かすがばる)というところに米軍キャンプがあって、父が20代の頃、バンドで歌ったり、ギターを弾いていた経験があるんですよ。
当時、グループ・サウンズのバンドをやっていて、どういう経緯かは知りませんが、米軍の人たちと交流があり、「基地で開催されているライブを観に来いよ!」と誘ってもらったんだそうです。
そこで兵隊さんたちが「オーティス・レディング」や「サム&デイブ」のカバーを演奏しているのを聴いて大ショックを受けて、自分自身もR&B(リズム&ブルース)にハマっていったみたいなんですよね。
それがきっかけで、父も米軍キャンプ内で時々演奏させてもらうようになったんだとか。
藤井:時代を感じますね。
諸藤:それこそ当時はハンバーガーやコーラも珍しい時代で、基地で初めて食べさせてもらって感動したみたいですよ。
その後、父はプロにはならず、会社を経営していたんですけど、音楽が好きで、自分の事務所にドラムセットとかが置いてあったんですよね。
仕事終わりに仲間とバンド練習をしている姿を、僕は母親に抱っこされながら見ていて、音楽に興味を持ったみたいです。
10歳からドラムを始めて、高校では地元の社会人ビッグバンドにも参加していました。
藤井:高校を出てすぐにバークリー音楽大学に留学したんですか。
諸藤:親の手前、1年間浪人して地元で一般大学の受験はしたんですが、「心ここに在らず」という感じでしたね。
当時、僕は日本の音大を国立音大くらいしか知らなくて、その頃はジャズ科もないクラシックのみの大学だったじゃないですか。
高校からジャズをやっていたので、ポピュラー系の学校をいろいろ調べていたら、「アメリカのボストンにはバークリー音楽大学という学校がある」と知り、「ここで専門的に学びたい!」と思いました。
親を説得し「お前がそこまで言うなら仕方ない」となり、留学させてもらう事ができたんです。
藤井:バークリー時代に印象に残っているエピソードはありますか。
諸藤:僕はラテン音楽が好きだったので、メキシコや中南米からの留学生と仲良くなってギグができたのが良い思い出で、楽しかったですね。
「ミシェル・カミロ」の曲なんかを演奏していました。
バークリー音楽大学留学を経て上京!元T-SQUARE・和泉宏隆さんとの出会い♪
藤井:卒業はされたんですか。
諸藤:3年通って中退しました。
帰国後、福岡の実家に戻ったんですけど、半年後にプロになるために上京する事になります。
その時も「プロになるのは大変なんだぞ!大丈夫なのか?」と、親には反対されましたけど。
藤井:バンド活動の経験もあるお父さんで、その後、経営者になられているわけですから、説得力がありますよね。
諸藤:留学時代に知り合った友人が神奈川県に住んでいたので、最初は少し居候させてもらって、家やバイト先を探しました。
藤井:東京の音楽業界って、大学が東京の音大や一般大(のジャズサークル)出身で、留学経験がなく、なんなら実家も含めて、ずっと東京近郊にいる方のほうが人脈を作りやすく、仕事ではうまくいっている傾向もあるような気がするんですけど、苦労はなかったですか。
諸藤:たまたまなんですが、高校生の頃に福岡で社会人ビッグバンドに参加していた時のメンバーの一人が、東京に本社のある会社に就職されていて、僕の上京を知って「紹介したい人がいるんだよね」と言って会わせてくださったのが、元T-SQUAREの和泉宏隆さんなんですよ。
藤井:なんと!? ビッグネームですね!
僕は中高が吹奏楽部で、和泉さん作曲の「オーメンズ・オブ・ラブ」や「宝島」は定番曲で、これきっかけでオリジナルのT-SQUAREを聴くようになって、ジャズ・ポップス・フュージョンにハマっていきましたからね。
同じような方、周りにも結構いる気がします。
2021年に急逝されたのはとてもショックでした。
諸藤:ちょうど紹介していただいた頃、和泉さんがT-SQUAREを脱退するくらいのタイミングで、自分のバンドを立ち上げようとしていたんですよね。
スタジオにお邪魔して、僕の音楽歴や他愛もない世間話をしつつ、
「これ、今作ってる曲のデモなんだけど、一平ちゃん、ちょっとここにドラムを打ち込んでくれない?」
みたいな話になって、音楽制作にも参加させていただきました。
いわゆる「DTM」ですけど、当時はまだパソコンがなくて「QX-3」というシーケンサーの時代ですね。
それがきっかけでバンドメンバーとしてライブ活動もご一緒させていただく事になりました。
貴重な経験でしたよ。
『ポリドール(現ユニバーサル・ミュージック)とプロデューサー契約♪』
藤井:ドラムだけでなく、作曲や打ち込みもされていたんですね。
諸藤:当時は「宇多田ヒカル」や「MISIA」、「bird」といった日本の女性R&Bシンガーが脚光を浴びていた時代で、僕も曲を作ってレコード会社にデモを送ったりしていました。
その中の一つに、現在はユニバーサル・ミュージックの傘下になっているポリドールというレーベルがあって、プロデューサーとして契約させていただいたんです。
簡単にアーティストをヒットさせられるほど甘い世界ではありませんでしたが、この頃から本格的に作曲をするようになり、今は主にBGMを作る仕事が多いですね。
現在も作家の事務所に所属させてもらっていて、どこで使われているのかはよく分からないんですけど、例えば日テレさんのライブラリに私の作ったBGMが登録されていて、要所要所で使われているようです。
過去にはテレ朝さんで「羽鳥慎一モーニングショー」の中のBGMや、フジテレビのアニメBGM、その他ゲーム音楽や、オンエアではないんですけど、「ドラえもん みこしパレード」というイベントで流れる曲を作った事もありますよ。
藤井:作曲はバークリーで学んだんですか。
諸藤:いえ、独学ですね。
もちろん、最低限の音楽理論の授業などはありましたけど、そこでしっかり作曲を学んだという感覚はないです。
まずは自分が好きな曲のコピーから始めて、理論やコードが分かる人に聴いてもらって、直してもらいながら学んでいった感じですね。
藤井:ピアノやギターのようなコード楽器の経験は?
諸藤:幼稚園の頃に2年くらいエレクトーンを習っていたらしいんですが、ほとんど記憶にないので、役に立っていないと思います(笑)。
今もコードを押さえて打ち込むくらいで、ピアニストのようにリアルタイムレコーディングはできないですね。
藤井:今はドラムと作曲の仕事の割合はどれくらいなんですか。
諸藤:ドラム3:作曲7くらいですかね。
『オンライン音楽教室「オルコネ」を設立!』
藤井:現在、諸藤さんはオンライン音楽教室「オルコネ」を運営する株式会社オール・コネクションの代表取締役なんですよね。
諸藤:そうなんです。
2022年の秋に法人を設立し、実際に教室運営を開始したのが翌年4月頃。
開講してから約3年が経ちました。
藤井:最初から法人にしようと思っていたんでしょうか。
諸藤:父が会社の経営者だったので、そのアドバイスもあって法人にしました。
資本金1,000万円未満で設立すれば、原則2年間は消費税の納税義務が免除されるという制度もありがたかったですしね。
当初は「この2年間でどこまでできるか、やれるところまでやってみよう」という挑戦でもありました。
ちなみに現在は、後でお話しする「オルコネ」と「和歌山南陵高等学校」との提携などの理由で、本社は大阪に置き、僕は基本、東京にいますけど、講師のサポートをするスタッフと、経理の2名の社員を雇っています。
藤井:2022年の秋は「コロナ禍」真っ最中で、まだまだ先が見えなくて「ウィズコロナ」という言葉が定着しつつあった頃だったような気がします。
オンラインが急速に普及したのもこの時期だったような。
諸藤:2020年からコロナ禍になって、我々ミュージシャンはほぼ全員、仕事が無くなりましたよね。
その時期よりは回復していましたけど、やはりこの経験がオンライン教室開講のきっかけになりました。
バークリー留学から帰国して上京後、約20年のプロミュージシャン生活の中で、本当にたくさんの同業者のつながりが生まれたので、オンライン教室講師という形でつなぎ、もしもまたコロナ禍のような危機が訪れても、皆さんが生活していくための一つの糧になれば良いなと。
また、登録してくださった素晴らしい講師陣のレッスンを全国の方に受講していただく事で、地域の格差無しに音楽で日本全体をつなぎたいと考えました。
藤井:なるほど。そういった想い・理念が「オール・コネクション」という社名、「オルコネ」という教室の愛称になっているわけですね!
これだけの数の講師さんに登録してもらうのは大変だったんじゃないですか。
諸藤:皆さん、快く引き受けてくれましたが、最初は一人ひとりに
「新しく開講するオンライン音楽教室の講師になってくれませんか?」
とメールをして、当然システムやお金の事で質問も受けるので、毎日メールを送っては質問に返信というような日々がしばらく続きました。
法人となると、講師とは業務委託契約を結ばないといけないので、弁護士さんに相談して契約書を作成したりも初めての作業で大変でしたね。
2026年現在では、100名ほどの講師が在籍するまでになりました。
藤井:単刀直入ですけど、経営は順調ですか。
諸藤:最近はだいぶ上向きですけど、やはり最初は簡単ではなかったですね。
「講師に登録してもらって、予約システムのあるホームページを立ち上げて、SNSなどで少し宣伝すれば生徒は集まるのか」
と思っていましたが、そんな甘いものではありませんでした。
導入した予約システムを構築している会社もオンラインで英会話教室の事業をやっていて、その会社の方から教わったのが、
「地道にブログを書く事」と「アフィリエイト施策」
だったんですよね。
もちろん、大々的に広告を出すという方法もあるけど、費用対効果はあまり高くないし、一時的なもの。
「ブログやアフィリエイトは短期的には効果が出なくて、やり続ける事で数年かけてようやく成果が出てくるものだが、結局は一番堅実」
というようなアドバイスをもらったんです。
僕はこれまで会社の経営や教室運営をやった事がない初心者でしたから、
「分かりました。やってみます!」
と、素直に受け入れて、それから現在までブログを書き続けていますね。
ブロガーとしても素人で、「キーワード」や「SEO」の知識もなかったので、手探りで始めました。
書いているうちにたまたまヒットする記事が書けて、
「なるほど、こういう記事が読者に伝わるのか!?(検索に引っかかるのか!?)」
と学んでいったような感覚です。
藤井:何事も「トライアンドエラー」は大切ですね。
僕も割と似たようなところがあって共感できるんですけど、諸藤さんも作曲・経営・ブログのライティングは独学で、現場で学んでいくタイプではないでしょうか。
人によっては完璧主義と言うか、
「(理論を)学校でしっかり学んで卒業をして、準備が整ってから始めよう」
というタイプの方が結構いらっしゃるんですけど、そういう方って結局一歩を踏み出せなくてスタートラインにすら付けていない傾向があるような気がします。
諸藤:そうかもしれないですね。
「分からないけど、とりあえずやってみる。壁にぶつかったらその都度解決策を見出して学習していく」
というスタイルが僕にも合っているかもしれません。
藤井:ちなみに、人気があるのはどのコースですか。
諸藤:オンライン教室なので、ボイトレやDTM、ピアノやギターは特に人気がありますね。
もちろん、管弦打楽器もたくさん受講していただいていますよ。
藤井:電子楽器やアンプで音量調節ができる楽器、パソコン画面だけでも受講できるDTMなどはやはり相性が良さそうですね。
音の大きい管楽器などは、特に都市部の住環境では難しい面もある気がします。
講師側は自宅に練習環境がある方がほとんどだと思いますが、生徒側はあまり多くないような。
『オンラインレッスンに価値を見出す!』
藤井:オンラインならではの難しさもありましたか。
諸藤:最初はコロナ禍に出始めた「Zoomって何だ?Google Meetって何だ?」からのスタートでした。
YouTubeやブログでも、
「Zoomとこのマイクでオンラインレッスンや配信をやってみました!」
というような動画や記事がたくさん出ましたよね。
それらを観ても、一方ではZoom推し、一方ではGoogle Meet推しだったりで正解が分からないので、いろんな楽器の講師にも協力してもらって、実証実験を行ったんです。
その結果、オルコネでは現在、Google Meetを推奨する形を取っていますね。
音の遅延は今でも多少あるようですが、音が聴こえないとか、途切れるといったトラブルはないので、問題なく受講できます。
もちろん、高価なオーディオインターフェイスやコンデンサーマイクをつなげばより高音質になるのは間違いありませんが、そこまでしなくても、できれば無線(Wi-Fi)でなく有線ケーブルをパソコンにつなぐ事で、あとは内臓マイク、ウェブカメラがきちんと作動すれば、Google Meet自体がデフォルトの設定のままで十分使えますよ。
藤井:スマホで受講される生徒さんもいらっしゃいますか。
諸藤:いらっしゃいますよ。
結局はネット環境の問題ですし、最近のスマホは優秀なので、良好なWi-Fi速度であれば受講は可能ですね。
藤井:オンラインの強みは、講師さんも生徒さんも、どの地域に住んでいても指導(仕事)や受講ができる点ですよね。
諸藤:現在でも、生徒さんの中には韓国在住の方もいらっしゃいます。
「韓国人ではなく、現地に住んでいる日本人で、お子様にピアノを習わせたいんだけど、言語の壁がない日本人の先生が良い」
というようなケースが多いですね。
藤井:このパターンのニーズはまだまだ増えそうな気がします。
今後、AIや翻訳技術が発展すれば、例えば「日本語や英語を話せないアジアの国の生徒さん」のようなニーズも出てくるんじゃないでしょうか。
【後編】へ続く(「和歌山南陵高等学校」との提携や、「オルコネ」の今後の展望などをお伝えします♪/6月8日公開予定)
諸藤 一平(Ippei Morofuji)
米軍キャンプでバンド活動をしていた父親の影響を受け、10歳からドラムを始める。
高校入学を機に地元の社会人ビッグバンドに参加し、ジャズ・ミュージシャンとも交流を深め数々のライブ、セッションもこなす。
その後、音楽を追求すべく、米ボストンのバークリー音楽学院に入学。海外のアーティストと共演する。
1997年に帰国。その後、上京。
元T-SQUAREのピアニスト和泉宏隆氏のグループ「Wisdom」に参加。ポリドール(現ユニバーサルミュージック)とプロデューサーとして契約をする。
ツアーを重ねると同時に歌もの系のプロデュース、作曲、アレンジもこなす。2010年、加塩人嗣、平田フミト、納見義徳、渋谷和利のグループ「どんでどん」またウィリー・ナガサキ・バンド等にレギュラー・メンバーとして参加。
現在はアーティストサポートを始め、ラテンバンド「カリブの快族」などで活躍中。
また歌モノ、TV番組BGM、ゲーム音楽、アニメ音楽など楽曲制作にも力を入れている。これまでの共演者はフレディー・ハーバード、ポール・ジャクソン、和泉宏隆、ウィリー・ナガサキなど多数。
藤井裕樹/音TOWNプロデューサー
【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』





