フリーランス音楽家が知らないとヤバい、銀行(預金)の秘密/Vol.15

音楽(芸術)を仕事にしていると、ある意味真逆とも言える「お金」の事は、ちょっと遠い存在に感じるかもしれません。

特に日本の(芸能関係の)場合、「お金の話はタブー/汚い」という慣習がまだまだあるのでは?

今回の「音TOWN.Biz」は、「演奏料やレッスン料(ギャラ)の入金」「コンサートやライブチケットの購入」の他、日常生活全般でも必ず利用している「銀行」について深掘りしてみたいと思います。

「なんとなく使ってるけど、正直よく分かっていない…」という方も多いのではないでしょうか?

おそらく今回お伝えする内容を全て把握している方は相当少ない気がしますね。

「家に大金を置いておくと危ないので、代わりに預かってくれる金庫サービス」という認識だけだとなぜ損をするのか、リスクが高いのか、フリーランスの音楽家さんにも必要な情報をお届けします♪

『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。

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このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!

お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!

この記事を読むと役に立つ人は!?

・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・「銀行の役割」「世の中のお金の仕組み」がよく分かっていない方
・将来に向けて経済的な不安がある方

読んだらどんな良い事が!?

・「銀行」や「金利」の仕組みが分かる
・「投資」や「資産運用」などを検討出来る
・「お金のカラクリ」を理解し、将来のリスクに対応出来る

銀行の役割とは!?

1. 預金

まずは皆さんが認識をしていて、利用もしている「預金」ですよね。

「タンス預金」という言葉を聞いた事があるかもしれませんが、多くの方は銀行に預金していると思いますし、ほとんどの仕事のギャラ(報酬)は銀行振込だと思うので、口座を持っていない音楽家さん・ミュージシャンはおそらくゼロでしょう。

2. 決済

もう一つ必ず利用しているのが「決済」

水道光熱費や、スマホ・インターネットの使用料を「銀行引落」にしている方は多いですし、クレジットカードを利用していたとしても、毎月の利用料は銀行から引き落とされますよね。

クレジットカードを使わない方の場合、ネットでの買い物やセミナー・講習会の支払いなどで「銀行振込」を利用している方も多いと思います。

3. 融資

「融資」とは「お金を借りる事」

「借金」という言葉を使うと「消費者金融」のイメージが強く、一般的にはあまり利用している音楽家さんはいらっしゃらないと思いますが、例えば結婚してお子さんがいて、一軒家やマンション購入のために「住宅ローン」を組んでいる方はいらっしゃるのでは。

フリーランスで住宅ローンを組むのはなかなか大変かもしれませんが…(特に「確定申告」で赤字申告の場合/課税所得がない場合)

4. 資産運用

これが一番イメージしづらい(実感が無い)かもしれません。

銀行は個人や会社からお金を預かり(預金をしてもらい)、そのお金を「家を買いたい人」や「会社・お店を作りたい人」に貸し(融資し)「利息・利子・金利」で運用益を上げているという事ですね。

この仕組みは、以前『音TOWN』でインタビューさせていただいた大野さんのお話が分かりやすいかと思います!


大野充明:「三菱UFJ銀行支店長→山野楽器取締役」異色の経営者から学ぶ♪【前編】

この他、国債など、安全な資産で運用を行い、利益を上げているそうです。

「金利」について知っておきたい事


フリーランスの音楽家さんで、「私は家を買う(住宅ローンを組む)つもりがない」という方は、先述の「融資・資産運用なんか関係ない」と感じるかもしれません(ちなみに僕も賃貸派です)。

アナタの預金が融資に回り、会社やお店がサービスを生み出し、そのサービスを我々が利用するので、関係ないわけがないのですが、目に見えて実感があるのが、アナタが受け取る「利息」だと思います。

めちゃめちゃざっくり説明すると、

経済が上向きだと、金利は上昇、アナタが受け取る利息が増える(融資を受けたい人や会社は返済額が増えて大変だけど、預金しているアナタの利息は増える)

経済が低迷していると、金利は下降、アナタが受け取る利息が減る(融資は受けやすくなるが、預金しているアナタの利息は増えない)

昨今は明らかに後者ですよね。

1980年の金利は?


僕は1979年生まれなんですけど、その翌年1980年の普通預金の金利は「8.0%」だったそうです。

これは、「100万円を1年間預けると、税引前で約8万円の利息が得られる」計算。

2016年〜2024年の驚くべき金利は!?


ここ10年くらいの普通預金の金利
は、なんと「0.001%」だったのをご存知でしょうか??

これは、「100万円を1年間預けると、税引前で約10円の利息が得られる」計算(税金を引いたら8円…)。


じゃあ、今はどうなっているのかと言うと、「0.2%」まで改善しています(大企業は儲かっているから?/政府や日本銀行の政策によって?)。

つまり「100万円を1年間預けると、税引前で約2,000円の利息が得られる」計算(税金を引いたら1,600円)ですね。

「8円の利息の時代」よりはだいぶマシですが、昨今の円安、物価高(特にお米の値段の急騰)を考えると、100万円預けて1,600円増える程度ではほとんど意味がないのがご理解いただけたのではないでしょうか。

また、今後の日本がバブル崩壊前の「1980年代」のような状態に戻るかどうかをイメージしてみてください。

少子高齢化問題(それに伴う社会保険料の高騰)や、IT化・グローバル化する社会においての日本の立ち位置(GDPの低下)などを考えると、「期待出来る」と考える方は少ないと思います。

ここまでのまとめ


分かりやすいように、皆さん全員が利用している「普通預金」で「金利」を説明しましたが、1979年生まれの僕の両親の世代は「会社に勤めて給料を銀行に預けておけば、勝手に増えた」と言っても過言ではないでしょう(「定期預金」ならもっと増えた!)。

※1,000万円預けていれば80万円増えたんですから、それだけで1年に1回くらい家族旅行に行けたわけです。

ところが昨今では、(融資を受けない人や会社にとっては)本当に「金庫代わり」のようになってしまっているんですね…

※後ほどさらに厳しい現実をお伝えします…

メガバンクとネット銀行


「メガバンク」
とは、現在の三菱UFJ銀行、・三井住友銀行・みずほ銀行の大手3大銀行の事。

ここに口座がある方は、最近「街中から店舗やATMが減ってきているな?」と感じているのではないでしょうか。

なぜかと言うと、昨今は店舗を持たない、オンラインの取引に特化した「ネット銀行」が主流になってきているから。

「楽天銀行」「住信SBIネット銀行」「PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)」「auじぶん銀行」「ソニー銀行」「イオン銀行」「ローソン銀行」「セブン銀行」「大和ネクスト銀行」「GMOあおぞらネット銀行」などがあり、すでに口座を作っている方も多いと思います。

ちなみに、先述の普通預金の金利はメガバンクの数字で、実は「ネット銀行」のほうが金利が高いケースが多いんですね!

理由は「ネット銀行は店舗がなくて、家賃や人件費のコストが少ないため、その分預金者に還元出来るから」と言えます(振込手数料などもネット銀行のほうが安い!)。

上記のようなたくさんのネット銀行同士が競争する事で、サービス向上のために金利を上げる&手数料を下げる傾向もあります。


じゃあ、「なぜメガバンクは無くならないのか?」という疑問が湧きますが、「特に高齢者がまだまだ窓口を利用している、メガバンクのほうが安心だと思っているから」ではないでしょうか。

実際「オレオレ詐欺」に遭いそうになっていた場合、窓口から入金しようとしていたら、おそらく止めてくれるでしょう…

僕は現在、成人になって自分でお金を管理するようになって初めて開設した三菱UFJ銀行(当時は三菱銀行)の口座はまだありますが、ネット銀行を引き落とし先に出来ない「小規模企業共済」のためだけに維持しているようなもので、最低限の預金を残し、あとは全て※複数のネット銀行に預金しています(ネット銀行には「いくら以上預けてくれると金利アップ」とか、「NISAやiDeCoなどの証券口座も開設してくれると金利アップ」などのサービスをしているところもあります!)。

※複数に分けている理由は後ほど!

インターネットやスマホをうまく扱えない高齢者でなければ、キャッシュレス決済が主流になり、現金を下ろす必要がほとんど無く、必要でもコンビニATMで下ろせる時代においては、「ネット銀行」のほうが便利でお得と考えるのが自然だと思います。

※つい最近、「三菱UFJ銀行がネット銀行を設立するかも」というニュースがありました。ネット・スマホがネイティブの世代が増え、メガバンクが淘汰される可能性も考えると当然の流れだと感じますね。

「円安」や「物価の高騰」でアナタの銀行預金はどうなる!?


最近はお米だけでなく、ありとあらゆる物やサービスが値上がりしていますよね。

円安の影響で、海外の楽器も値上がりしましたし、金属などの材料を輸入しているために、国産の楽器も相当値上がりしています。

ここでお伝えしたいのは「本当に銀行に預金をしておくだけで大丈夫??」というお話。

「円高・円安」の話はまた改めてしようと思っているのですが、一昔前は「1ドル約100円」で、最近は「1ドル約150円」という数字になってきていますよね。

例えば、

「以前100万円で買えたアメリカの楽器は150万円出さないと買えない」

「(実際の学費と違うかもですが)以前1,000万円で留学出来たアメリカの大学には1,500万円払わないと通えない」

という事で、実質「円の価値が3分の2に下がっている」と言えるのではないでしょうか。

同じ事が「物価」にも言えるわけで、最近のお米の値段はちょっと異常な高騰ではありますが、「5kg 2,000円のお米が3,000円」の物価(世の中)になった場合、「現在のお金の価値の3分の2に下がっている」事になります(今の1.5倍出さないとサービスを受けられない)。

つまり、

『銀行の預金額(アナタの資産)が減っているのと同じ』なんですよね。

以前、「老後2,000万円問題」についても少し解説しましたが、日本政府は「老後、2,000万円の貯金をしていれば安心に暮らせますよ!」(目安)と言っていたのに、円安や物価高騰で円の価値が今の3分の2になったら、実際には3,000万円必要な世の中になっているんです。


フリーランス音楽家は「年金」を将来いくらもらえる!?/Vol.4
(参考:「老後2000万円問題」とは!?)

「金利が無くても、銀行を金庫代わりにして預金して、コツコツ貯金をしていれば大丈夫」

と思っていたら、実際には『価値で換算すると、お金が減っていく可能性が高いのが現実』だと言えますよね。

とある投資家さんの記事で読んだのですが、

日本政府は物価を毎年2%上げようとしている

物価が2%上がるという事は、お金の価値が毎年2%下がるのと同じ

銀行にお金を預けているだけだと、毎年2%ずつ預金が減っているのと同じ

と書いていました。

『貯金や資産が潤沢にある方以外は、多少のリスクはあっても、ただ銀行に預金しておくだけでなく、何かしらで資産を増やす必要がある』

と言えるのではないでしょうか?


フリーランス音楽家は「年金」を将来いくらもらえる!?/Vol.4
(参考:フリーランスに出来る対策は!?)


フリーランス音楽家に有益な「私的年金」を活用した「節税」テクニック/Vol.5

※上記の記事では「付加年金」や「NISA」を紹介していますが、先日お話を伺った終活アドバイザーの佐藤真砂子さん(ファイナンシャルプランナーの資格もお持ちです)は「政府が勧めてくるもの(NISA)には要注意」とおっしゃっていました。(政府は我々が得をする「付加年金」などは教えてくれませんが、よく分からない「NISA」などは積極的にPRしますよね…)

佐藤真砂子:「楽しい終活」音楽家も必見!後悔しない人生のために♪
(この記事は「終活」に特化した内容になっています)

「私は投資なんか怖いからやらない・預金で良い」と感じる方もいらっしゃると思いますが、この投資家さんは、

銀行に預金しかしていない人は、円(と日本政府)に全額投資してしまっているのと同じ

ともおっしゃっています。

投資を怖いと思って預金をしているだけの方のほうがリスクの高い投資をしている可能性があるという事ですよね…

客観的に見て、今の(将来の)日本経済や政府をそこまで信用出来ますか?(選んだのは自分たちですが…)

まとめ


いかがでしたか。

「音TOWN.Biz」では毎回重要な「お金の話」をお届けしていますが、ある意味今回が最も重要だと言えるかもしれません。

店舗のあるメガバンクや地方銀行、信用金庫にしか口座がない方はネット銀行も検討してみてください


※ちなみに「預金保険制度」という「万が一、銀行や信用金庫などの金融機関が破綻した場合でも、預金者の資産を一定額まで保護する制度」があります。

「1金融機関ごとに元本1,000万円まで+その利息」なので、銀行口座を複数に分けておくのは実は大切なリスク管理です!(ちなみに「外貨預金」は補償の対象外なので、「円安だから全額ドル建てで預金をしておこう!」も危ないです)

昨今は大手の会社でも倒産する時代。

「老後の2,000万円」(実際は3,000万円かもしれませんが)をコツコツと貯めて安心していたのに、預金をしていた銀行が破綻した場合、1,000万円になってしまうんです。

つまり「一つの銀行には1,000万円以上預金をせず、複数の口座に分けるのが良い」という事!

将来を見据えた時、「このまま銀行預金だけで良いのか」「何か投資や資産運用を始めたほうが良いのか」、アナタの年齢や家族構成、貯金額や人生観などもふまえ、よく考えたほうが良い時期が来ているのではないでしょうか。

不安定な「フリーランス」という職業を選んでいる以上、このような知識を身に付けておく事は自分や家族を守るためにも非常に大切だと思います♪


音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹

藤井裕樹/音TOWNプロデューサー

【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』