高橋真太郎:フリーランス音楽家でも出来る「海外旅行」「旅育」!?親子で人生を豊かに♪【後編】

フリーランス音楽家の海外旅行・旅育を特集する音TOWNインタビュー記事サムネイル(後編)

※この記事は【前編】から続いています。

お仕事の収入や日程が不安定な「フリーランス音楽家」という働き方

「海外旅行なんて無理!」「ましてや家族や子どもとなんて…」と諦めていませんか?

トロンボーン奏者として多忙な高橋真太郎さんは、本業だけでなく、多彩な複業(副業)や現地での練習方法の工夫によって毎年複数回の海外旅行を実現

時には小学生のお子さんも連れて海外を訪れ、インターネットでは味わえない「リアル・非日常の体験」を通して親子の関係を深めています

「人としても音楽家としても成長出来る」海外旅行の魅力や価値を高橋さんにシェアしていただきました♪

【前編】【後編】に分けてお届けします♪)

『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。

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この特集は、『音TOWN』が目指す「QOL」(クオリティ・オブ・ライフ)「持続性」(サステナブル)「多様性」(ダイバーシティ)を実践している音楽家さん、経営者さん、経営しているお店などをご紹介するコーナー。

これからの時代に合った柔軟な生き方のモデルが見つかるかも!?

この記事を読むと役に立つ人は!?

・この先「音楽一本」「一つの楽器」で食べていく事に不安を感じている方
・音楽以外にも好きな事、得意な事があり、それを生かしたい方
・子どもに早いうちから海外旅行や英語(外国語)を体験させたい方

読んだらどんな良い事が!?

・プロは「音楽以外の仕事をしてはいけない」「一つの楽器で勝負すべき」という先入観から解放される
・「副業」「複業」で人生を豊かにする選択肢が広がる
・子どもがグローバル、フレキシブルに生き生きと育つ可能性を知る事が出来る

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音大生のための“働き方”のエチュード/著:藤井裕樹
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「旅育」が子どもの可能性を伸ばす!

ザ・ベネチアン・マカオの屋内運河でゴンドラに乗る親子。石橋と水路を背景にリゾート内アトラクションを楽しむ様子
<マカオの5つ星ホテル「ザ・ベネチアン・マカオ」内のゴンドラに乗船!/高橋さん提供>

藤井:高橋さんは自分一人だけでなく、「旅育」というコンセプトで、娘さんを海外旅行に連れて行っていますよね

そこにはどんな想いや願いがあるんでしょうか。

高橋:僕がこの10年で経験したような「外から客観的に日本を見る視点」を早いうちから身に付けてほしいという想いですね。

単純に「全く違う言葉や価値観をもった人々が世界中にたくさんいる事」を体験させたいという気持ちもあります。

ちなみに海外ではないですけど、先日「大阪・関西万博」にも連れて行きましたよ。

さまざまな国を一度に疑似体験出来て、親子共々良い経験になりました。

娘は今年、小2なんですけど、「英語とも親しくなってほしい」と思っています。

藤井:「将来英語が出来ないと一流企業に就職出来ないから勉強しなさい!」

と頭ごなしに説教されても、実感がなく、やる気も出ないけど、旅でのリアルな体験があると自分から興味をもつようになるんじゃないでしょうか。

高橋:正にそうですね。

マカオに娘を連れて行った時、ホテルのロビーで僕が両替をする間、少し離れた椅子に座って待たせていたんですよ。

その時、一人でいるのを心配したホテルのスタッフが娘に声をかけてくださったんですけど、

「何も答えられなかった…」

と、子どもながらに悔しい思いをしたみたいなんです。

でも、こういう経験が大切なんですよね。

僕なんて先述SUBWAY注文失敗事件の時、もう21歳でしたから(笑)。

フリーランス音楽家の海外旅行・旅育を特集する音TOWNインタビュー記事サムネイル(前編)
参考:「アメリカ・西海岸ツアーで海外旅行好きが覚醒!?」

娘はまだ学校で英語の授業は始まっていませんが、たまたま国語の時間に先生が「猫は英語でなんて言うでしょう?」と質問をしたそうなんです。

それに娘が答えた「cat」の発音がとても良くて褒められたそうで、家でも楽しく発音練習に付き合ってくれています

先輩のパパママさんのお話では、小学校の高学年とか中学生くらいになると、部活動に熱心な子なんかは他の事が出来ないくらい忙しくなるらしいので、それをふまえると、子連れ旅は小学校4年生くらいまでがチャンス

経済的にちょっと無理してでも、旅に連れて行くようにしています

実際に経験させた結果、万が一本人が海外を嫌になってしまっても、それはそれで良いと思っているんです。

大切なのは「食わず嫌い」にさせない事ですね。

旅行中のホテル客室で朝の宿題に取り組む子ども。窓外の街並みを背景に、学習習慣を続ける旅育の様子
<旅行中も毎朝、宿題に取り組みます。その間に僕もしっかり練習♪/高橋さん撮影>

旅は日常の延長/旅先での練習は!?

窓辺でブレストレーニング用エアバッグを使い、呼吸法の練習をする金管(トロンボーン)奏者の様子。明るい室内での基礎トレーニング
<旅先でのエアバッグを使用したブレストレーニングの様子/高橋さん提供>

藤井:僕は2019年6月に個人事業主から法人成りして、その年の11月のイベントを最後にフリーランスの演奏現場は実質卒業したんです。

音TOWNプロデューサー藤井裕樹さんのインタビュー画像 ココロとカラダが健康になる生き方について
藤井裕樹:『音TOWN』『音ラク空間』でココロとカラダが健康な人を増やしたい♪

今は、「音楽教室」でのレッスン講師はやってはいますが、会社・お店の経営、プロデュース、ウェブのライターのような仕事がメインで、「(毎日絶対)練習しなきゃ!」からは解放されたので、楽器を持って海外に行く事はないんですけど、以前は高橋さんと一緒に参加した「International Trombone Festival」のようなイベントに参加して(公私を織り交ぜて)練習の機会を作るとか、音楽イベントと関係のない国へ行く時は、スーツケースにプラスチックのトロンボーンとサイレントブラスを入れてホテルで練習するとかしていました。

(↓ 藤井撮影/タイ・バンコクのホテルにて)

スーツケースに収めた赤いプラスチック製トロンボーン。海外旅行に持参する練習用の携行楽器  ホテルのベッドの上に置かれた赤いプラスチック製トロンボーンとヤマハ・サイレントブラス。旅先での静音練習セット

藤井:高橋さんはどんな工夫をしていますか。

高橋:自分自身の意識として、

「旅は日常の延長」

と捉えているんです。

児島瑞穂さんのインタビューの中で藤井さんが仰っていた

「ヨーロッパのプレイヤーは夏に楽器も持たずに2ヶ月くらいバカンスに行く(人もいる)」

というスタイル(音楽を完全に忘れるというスタイル)は僕には合っていないと考えていて、

「トロンボーンや音楽の事を忘れられない」のが日常なので、楽器こそ持って行かないものの、練習の時間は毎日設けるようにしています

ユーフォニアム・トロンボーン奏者で元キャビンクルーの児島瑞穂さんインタビュー画像
児島瑞穂:フィンランド在住/「ユーフォニアム&トロンボーン奏者/元キャビンクルー」という生き方♪
参考:「音楽家も健康管理は大切!」

藤井:確かに真面目・勤勉な日本人には完全にオフを作るというのは難しい気もするので、「最低限これだけの練習はする!」と決める事で、「罪悪感・背徳感」抜きに旅が楽しめるかもしれません。

高橋:よくある旅行のイメージだと、朝から晩まで予定を詰め込みがちですが、僕は朝食の前か後に日課の練習を15〜30分ほどやって、朝は部屋でゆっくりと過ごすんです。

そうやって自分自身のミュージシャン・マインドが満たされると、とても気分よく観光出来るんですよ。

藤井:具体的にはどんな練習をするんですか。

高橋:演奏という行為は、「表現力」と「体力」の2つに大きく分けられると僕は考えています。

表現力はさまざまな経験から自然に上がっていく事も多いですが、演奏のための体力は意識的に維持・向上させる事が不可欠です。

まずは「自衛隊体操」をYouTubeを観ながら行います

音楽仲間から教えてもらい、昨年から続けていますね。

5分ほどの短い体操ですが、体全体が温まって気持ちいいですよ。

それから、「エアバッグ」を使った呼吸の練習(ブレストレーニング)ですね。

その後はチューナーを鳴らしながらマウスピースでのバズィング練習

中音域から始め、なるべく広い音域をスムーズに行き来出来るように鍛えます。

藤井:金管楽器奏者は特に、口の周りの筋肉の維持は必須ですよね。

高橋:そうですね。これらの練習で体全体の筋肉をバランスよく維持出来れば、帰国してからのリハビリは最小限で済みます

藤井:「旅の経験は自分自身の音になっていく」ので、結果的には「日本では出来ない表現力アップのイメージトレーニングになっている」かもしれないですよね。

髙橋:はい、僕もそう信じています!

旅行に持参するトロンボーン用マウスピース3本とブレストレーニング用エアバッグを、ホテルの枕の上に並べた練習アイテム
<旅に必ず持参するマウスピースとエアバッグ/高橋さん撮影>

複業(副業)でも投資を回収!?


<観光客に向けて、英語で日本のお土産を紹介しています/高橋さん撮影>

藤井:冒頭の挨拶で「少し“音楽ではない”お仕事もやっている」との事でしたけど、何をやっているんですか

高橋:ズバリ「英語を使う」というコンセプトで、いくつか副業(複業)をもっているんです。

1つ目は「羽田空港での販売スタッフ」、2つ目は新宿・歌舞伎町の飲食店で「海外観光客のための受付スタッフ」、3つ目は「外国人の参加するイベントなどでの案内スタッフ」です。

どれも「自由シフト制」なので、音楽活動には全く影響なく働く事が出来るうえに、「お金をいただきながら英語を勉強出来て一石二鳥」なんですよ。

英語学習にはそれなりにお金を使ってきたので、きちんと回収したいという想いもあります。

藤井:「投資した分を回収する」のはビジネスの基本ですよね。

高橋:音楽でもそれなりに大きな金額の投資をしてきて、幸い今はそれを回収する立場になれたので、英語でもそのようにしたいなと考えて、数年かけて仕事を広げてきました

藤井:「NISA」や「iDeCo」で資産運用するのも投資なんですけど、「自分が学びたい事にお金をつぎ込むのも投資」なんですよね。

高橋さんにとっては、「海外旅行に行くという行為も人生への投資」と言えるんじゃないでしょうか。

好きな事の組み合わせで能動的に人生を切り開く!

ステージでトロンボーンを力強く演奏する高橋真太郎さん。ライトに照らされたライブ演奏シーン。
<トロンボーンに出会って間もなく30年。続けて来られた事に感謝しています♪>

藤井:フリーランスの音楽家さんが、

「お金と時間をやりくりして海外旅行の時間を生み出す」

「しかも、お子さんの分の予算も捻出する」

というのは決して簡単ではないと思うんですけど、どのように工夫していますか。

高橋:テーマパークバンドのレギュラーのような、ある程度まとまった定収入が得られる仕事をいただけている事は大きいですね。

また、先ほどご紹介した副業(複業)は、英語のスキルを必要としている事で一般的なアルバイトと比べても時給が少し高いんです。

音楽の仕事の量に合わせて副業(複業)を毎月増やしたり減らしたり出来るので、収入が安定しますし、年収も見通しやすくなります

完全なフリーランスで音楽の仕事のみだと、いつ仕事が舞い込むか読めないので、前もって旅行を計画するのも難しいじゃないですか。

複業(文字通り、音楽業を含む複数の仕事)のおかげで、いい意味で「音楽の仕事に依存し過ぎずに、能動的に旅行のスケジュールを組む事が出来ている」んです。

もちろん旅行期間に後から仕事が入る事もあるんですが、「ご縁がなかった」と割り切って、お断りしてしまっています

音楽業界には「音楽一本で食べていく事」に誇りや信念をもって、それを貫いている方も多いですし、僕はそういう方の生き方も尊敬しています

しかし、僕にとっては「好きな音楽の仕事」をベースにしつつも、このように「別の好きな仕事」を組み合わせて働く事が、最も充実した生き方なんですよね。

「好きな海外旅行」にも行けて、結果、人生の経験値もアップ出来て、うまく回っている気がしますね。

音楽業だけでは得られなかった考え方や人脈が広がって、人生の経験値がアップしているのは間違いありません

そう言えば、2007年のアメリカ・西海岸ツアーで現地の学生と交流した際に「ダブルメジャー」という制度を知りました。

アメリカの大学では、例えば「音楽」と「心理学」のように、2つを同時に専攻出来るんですよ。

日本でもこの制度が広がると良いですね。

藤井:コロナ禍のように、何らかの状況で音楽・エンタメのお仕事がなくなったとしても、もう一つのキャリアで食べていける可能性が高まりますよね。

高橋:副業(複業)について、こうしてオープンにしていき、前向きに捉えられる空気感を作っていきたいです。

藤井:実際、音楽だけで生計を立てられていないけど、“隠れて”別のお仕事をしているという方、実は多いんじゃないでしょうか。

公表していない理由としては、日本は欧米ほど「二足のわらじ」が市民権を得ていなくて、「後ろ指を指される」リスクがあるからというのもありますよね。

高橋:副業(複業)に対して、「つまらないけどやむを得ずやる」という「負の感情」をもっている方も少なくないと感じます。

そんな方にこそ、幅広い業界に視野を広げて「自分の好き・得意」を見付ける事をオススメしたいですね。

藤井:最後になりますが、今後はどんな未来を創造していきたいですか。

高橋:「人生100年時代」と言われますが、少なくとも80歳までは何かしら働いていたいと考えているんです。

今年40歳なので、ちょうど半分、折り返し地点ですね。

参考:「健康寿命を延ばすために今すべき3つの習慣」

先述した「自分の好き・得意」は年齢と共に少しずつ変わっていくので、素直な気持ちでその変化を受け止め、緩やかにキャリアをシフトしていきたいです。

また、価値観の近い仲間を業界を超えて増やしていきたいですね。

音楽家は、アスリートのように定年は無いにしても、身体面でのリスクは常に抱えています

実際、僕は数か月前に初めてヘルニアになってしまい、4日間の寝たきりを経験しました。

幸い軽症だったんですけど、もしも重症だったらテーマパークのお仕事が出来なくなっていたかもしれません。

その経験からも、「音楽以外のスキルや人脈を広げる事の大切さ」を改めて感じています

僕の場合はその一つが「英語」や「海外旅行で得た経験」で、将来的には「英語 x 音楽」かもしれないし、「英語 x 観光」かもしれませんが、何かしらキャリアを掛け合わせて、仕事をしていきたいですね。

そして、今回お話させていただいた事を少しずつ娘に伝えていく事が、今後の僕の役割だと感じています。

結局親の思い通りには育たないとはよく聞きますが(笑)、父親として最大限のサポートをするつもりで、これからも親子共々、旅行を通して人生の可能性を広げていきたいです♪

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白い背景でトロンボーンを持つ男性トロンボーン奏者「高橋真太郎」さんのプロフィールポートレート
高橋 真太郎(Shintaro Takahashi)

1985年新潟県生まれ。東京藝術大学音楽学部卒業。

11歳からトロンボーンを始め、吹奏楽、オーケストラ、金管アンサンブル、マーチングバンド等様々な編成や音楽ジャンルを経験。

大学入学後次第にジャズに傾倒し、ビッグバンドを中心に活動の場を広げてゆく。

現在テーマパークへのレギュラー出演の他、Gentle Forest Jazz Band、グランドフィルハーモニック東京、Wind Roots等に参加。

指導者としても、幅広い世代にレッスンを提供している。

これまでにトロンボーンを古賀慎治氏に、ジャズトロンボーンを中路英明氏に師事。

藤井裕樹

藤井裕樹/音TOWNプロデューサー

【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』