フリーランス音楽家の節税に有効な「経費」の話【前編】/Vol.7

サラリーマンのようにボーナスがないフリーランスにとって、「確定申告」後に戻ってくる「還付金」は、人によっては一年に一度のボーナスのようなものかもしれません♪

「還付金が増える」=「所得をおさえられている」ので、所得にかかる「所得税」や「住民税」もおさえられる事になりますね。

今回は節税のために重要な「経費」について解説します!

『音TOWN』(おんたうん)は、『音楽“と”生きる街』をコンセプトに、(プロアマ問わず)音楽家がより生きやすくなるために、主に音楽以外の有益な情報をお届けしています。

このシリーズでは、音楽を職業にしていくためにとても重要であるにもかかわらず、学校ではあまり教わらない“お金”について、改めて学んでいきましょう!

お金について学ぶと「生き方」も明確になりますよ!

この記事を読むと役に立つ人は!?

・フリーランス・個人事業主の音楽家(演奏家)として活動している方
・初めて確定申告を行う方
・毎年確定申告を行っているが、実は仕組みをよく分かっていない方

読んだ後に解消される不安は!?

・確定申告の基本が理解出来る
・経費がどういうものなのか分かる
・還付金を増やし、所得税・住民税を下げ、節税をする事が出来る

「収入」と「所得」の違い


そもそもこの2つの違いがよく分かっていない音楽家さんが意外に多いかもしれません(特にフリーランスになりたての方)。

「収入」とは?

「収入」とは「売上」の事。

(実際にはギャラ・報酬の金額は案件によってまちまちですが)例えば、昨年1年間でギャラが1万円の仕事を300本やったとしたら、「売上は(年収は)300万円」となりますね。

音楽家さんの場合、「売上」という言葉のニュアンスがピンとこないかもしれませんが「演奏料」「アレンジ料」「講師料」などは「売上」になります(サービスを“売って”得た収入だから)。

「所得」とは?

一方で「所得」とは、「収入(売上)から必要経費を差し引いたお金」の事。

例えば、年収300万円の音楽家さんの場合、そのお金を得るための電車移動の「交通費」が30万円(1回1,000円 x 300本)で、(実際にはそんな事はないと思いますが)それ以外に何も経費がかかっていないとしたら、「300万円 – 30万円」「270万円」「所得」になります。

ここでの一番大切なポイントは、

『所得税や住民税は、収入・売上ではなく、「所得」によって計算される』

という事!!

・経費が多ければ、その分「所得」を下げられ、所得税・住民税が減る/還付金は増える

・経費が少なければ、その分「所得」が高いと見なされ、所得税・住民税が増える/還付金が減る(もしくは還付金なし/もしくは追加で納税になる)

認められる「経費」や「控除」についてよく知らないと、結果、所得が増え、納税額も増え、還付金が少なくなってしまうので、もったいないですよね!

※もしも上記の例のように、交通費しか経費として申告しなかった場合、270万円から控除額を引いた金額に対して課税されるので、相当な税金を支払う事になります!!

「控除」については後日改めて解説しますが、「社会保険料控除」「小規模企業共済掛金控除」については下記の記事に掲載していますので、参考にしてください♪


フリーランス音楽家は「年金」を将来いくらもらえる!?/Vol.4


フリーランス音楽家に有益な「私的年金」を活用した「節税」テクニック/Vol.5

「必要経費」とは?

「必要経費」とは、文字通り「そのギャラ・報酬・お金を得るために必要不可欠な費用」の事。

先述の例のような「交通費」は分かりやすいですよね。

例えば、僕は千葉県市川市に住んでいますが、新宿で演奏するお仕事の場合、総武線を使うと往復で約800円かかり、これが「経費」として認められます(歩いて仕事に行くのは不可能で、必要不可欠だから)。

ちなみにサラリーマンの場合、職場が新宿だったとしても、通常会社から定期が支給されていて、自分の財布から交通費を捻出しているわけではないので、「経費」として認められないわけですね。

ギャラが1万円だったとしても、実際には9,200円しか儲からないから、「税金は後者のほうで計算しましょう」という考え方になります。

サラリーマンのように「毎月の収入が安定していない」とか「厚生年金がない」とか、さまざまなデメリットがある反面、このような「税の優遇(救済措置)」は、圧倒的にフリーランスのほうが多いと言えますね。

法律で認められている権利なので、使わないと損です!


音楽家が知っておきたい「サラリーマン」と「フリーランス」の違い/Vol.1

経費として認められる可能性が高いもの

では、具体的にどのような費用が経費として認められるのでしょうか。

下記の記事でも簡単にご紹介しましたが、今回はより細かく解説していきます!


フリーランス音楽家に必要な「確定申告」の基本と「節税」ポイント/Vol.2

音楽活動に関する経費

楽器や機材の購入費 = 消耗品費(10万円未満) or 減価償却費(10万円以上)

当然ですけど、音楽家さんは楽器がないと仕事にならないですよね!

声楽・ボーカルの方は楽器はいらないですけど、例えば「自宅での練習用(もしくはライブ用)に5万円のキーボード」を買ったら「経費(消耗品費)」です。

もしくは1万円のマイクを買っても「経費(消耗品費)」です。

プロが使用している楽器の多くは10万円以上すると思うのですが、1年しか使わないという事はないので、消耗品ではなく、減価償却資産だと考えられます。

「減価償却費」については、ちょっとややこしいので後日改めて説明します♪

楽譜代・PCソフト、アプリ= 消耗品費(10万円未満)

イベント演奏の仕事が来て「リクエストで◯◯を演奏してほしいんですよね」と頼まれ、その楽譜を持っていなかった場合、あまりに特殊で一度きりしか使わないなら先方に用意してもらう手もありますが、演奏頻度が高いなら、購入して自身のレパートリーにしておくのもアリですよね!(リクエストに応えられる対応力が高いほど重宝されます!)

また、リクエストの曲を自分で編曲する場合、最近はほぼ手書きの方はいらっしゃらないと思いますが、楽譜作成に必要なPCソフトは「経費(消耗品費)」になります。

最近では、チューナーやメトロノームなんかもスマホのアプリを使用している方も多いですよね。

機能が豊富なもの、広告が表示されなくて使いやすいものなどは有料だと思いますが、こういったものも「経費(消耗品費)」になります。

楽器・機材の修理費 = 修繕費

楽器を仕事に使用していたら、例えば金管楽器の場合、ぶつけて凹ましてしまう事もあるし、サックスの方などは定期的にオーバーホールに出したりしますよね。

これらは「経費(修繕費)」です。

弦楽器の弦の張り替えは、修理というよりは「消耗品費」になるかもしれません。

スタジオ代 = 賃借料

例えば、仕事のためにバンドでスタジオを借りてリハーサルを行う場合や、(人によっては自宅で出来る方もいらっしゃるとは思いますが)ヴァイオリンとピアノで合わせを行うといった場合、練習室を借りる事になりますよね。

この場合も「経費(賃借料)」になります。

レッスン代・セミナー代 = 研修費

これは「レッスンをして受け取るお金」ではなく「レッスンを受けて支払うお金」のほうですね。

卒業後も師匠のレッスンに通うとか、来日中の有名プレイヤーのマスタークラスを受講するとかして支払ったお金は「経費(研修費)」になります。

※ちなみに音楽だけでなく、「(プロの音楽家としての)キャリアアップのためのビジネスセミナー」なども対象

音楽関連の書籍や教材 = 新聞図書費

最近はネットで手に入る情報が増えたとはいえ、まだまだ音楽書や雑誌を購入する機会もあると思います。これらは「経費(新聞図書費)」になります。

団体加入費 = 諸会費

日本はあまりユニオンが機能していないと言われていて、加入者も少ないかもしれませんが、もしもそういった組織に加入し、年会費などを支払っている場合は「経費(諸会費)」にする事が出来ますね。

ちなみに僕はスタジオミュージシャンの分配金(レコーディング当日のギャラとは別に、後日その録音を使用した際に発生する「二次使用料」)の管理をしている団体に加盟していたので、この年会費も対象になりました。

経費として認められないのはどんな時?

ここまで解説してきた費用は、僕がフリーランス(個人事業主)だった時の経験から判断しても、原則「経費として認められる」と思います。

では、認められないのはどんな時かというと、、

復習になりますが、大前提は、

「必要経費は、そのギャラ・報酬・お金を得るために必要不可欠な費用」

でしたよね。

つまり、「必要経費として認められるか」の判断基準は、

・ギャラ、報酬を得るためだったか

・必要不可欠だったか

です。

例えば、トロンボーン奏者の僕が「趣味」で民族楽器を購入したとか、「部屋のオブジェ」としてヴァイオリンを購入した場合、仕事と関係がないので(ギャラ・報酬を得るためではないので)経費にはなりません

また、今回少しだけ「交通費」について触れましたが、「市川⇄新宿」の電車賃は常識的に考えて経費として認められると思いますが、例えば、演奏する場所が自宅から徒歩3分なのに、タクシーを使った場合、経費としては認められないと思います(必要不可欠とは言えないので)。

では、本日はここまで。

【後編】では楽器・音楽関係ではない経費について細かく解説します!


音TOWNプロデューサー/株式会社マウントフジミュージック代表
3級ファイナンシャル・プランニング技能士/トロンボーン奏者、『藤井裕樹』による
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藤井裕樹

藤井裕樹/音TOWNプロデューサー

【株式会社マウントフジミュージック代表取締役社長・『音ラク空間』オーナー・ストレッチ整体「リ・カラダ」トレーナー・トロンボーン奏者】 1979年12月9日大阪生まれ。19歳からジャズ・ポップス系のトロンボーン奏者としてプロ活動を開始し、東京ディズニーリゾートのパフォーマーや矢沢永吉氏をはじめとする有名アーティストとも多数共演。2004年〜2005年、ネバダ州立大学ラスベガス校に留学。帰国後、ヤマハ音楽教室の講師も務める(2008年〜2015年)。現在は「ココロとカラダの健康」をコンセプトに音楽事業・リラクゼーション事業のプロデュースを行っている。『取得資格:3級ファイナンシャル・プランニング技能士/音楽療法カウンセラー/メンタル心理インストラクター®/安眠インストラクター/体幹コーディネーター®/ゆがみ矯正インストラクター/筋トレインストラクター』